2013年09月15日

武井和人先生の研究成果を補完した拙文のこと

 『もっと知りたい 池田亀鑑と「源氏物語」第2集』を刊行してからの後日譚です。

 編著の《連載》の中にある拙文「池田亀鑑を追う(第二回 源氏展の背景にある検閲と写真)」で、「四、昭和六年に大正大学で展示された古写本『源氏物語』」という節があります。
 次のように語り出したところです。


 東京大学で源氏展が開催された前年の昭和六年に、大正大学で一つの展覧会があった。そこには、池田亀鑑が所蔵していた古典籍が多数展示されたのである。これは、これまでに指摘がなかったことである。(213頁)


 ここで、「これまでに指摘がなかったことである。」と書いてしまったことは、実は調査と確認が不足したものでした。

 この展覧会のことは、池田亀鑑のご子息である池田研二先生より拝受した、『国文学資料展観目録』(主催 大正大学郊北文学会、昭和六年五月八日・九日)によっています。

 その展覧会は、「はしがき」に
「高野辰之池田亀鑑亀鑑両人の蔵品中から四百点ばかりを選んで列ねます。」
とある通りです。

 私はこの冊子から、池田亀鑑の所蔵にかかる129点を紹介して、二三の問題を検討しました。

 これは、すでに本ブログ「昭和6年に大正大学で展示された古写本『源氏物語』」(2011年6月16日)で報告したことをもとにして整理し、再構成して収載したものです。

 この展覧会に関連して、私が取り上げたものと同じ展示目録である『国文学資料展観目録』によりながら、池田亀鑑についてではなくて、高野辰之のコレクションである「斑山文庫」に関して論じたものがあったことを、このたび教えていただきました。しかも、それは、旧知の武井和人先生(埼玉大学)からでした。目配りの至らなさに、恐縮しています。

 武井和人「斑山文庫本追尋・続」(『研究と資料』第61輯、2009・7)
がそれです。
 この論文名をクリックしていただくと、論文本体がダウンロードできます。

 ここには、次のように記されています。


 該目録より高野辰之蔵とされるもののみ抄出する(因みに、池田亀鑑蔵とするもののうち、現在、行方が分からなくなつてゐるものが含まれるかと想像され、この紹介も必要なのであらうが、紙幅の関係で省く。今後別途機会を得て考察してみたい。)


 つまり、4年前に武井先生が報告紹介のうえ考察を加えられた資料に関して、それが高野辰之だけに関してのものであったのに対して、私の報告では、もう一人の池田亀鑑だけに関するものだった、ということです。

 しかも、その資料を武井先生に提供されたのが、徳江元正先生だったのです。

 徳江先生には、私が國學院大学で授業を教わったことのみならず、私が大阪の高校で教員をしていた頃に、忘れられない出来事がありました。
 私が上京して学会で研究発表をした後、会場近くの食堂で一人で食事をしていた時のことでした。同じ食堂におられた徳江先生が先にお帰りになる時に、君のも一緒に払っておくからね、と言って出て行かれたのです。
 遠い所からご苦労さま、というお気持ちからだったのでしょうか。
 先生とは研究対象とする時代も、テーマも異にしていて、特に親しく指導していただいたのでもなかったので、本当に恐縮しました。

 その後、私が高崎正秀博士記念賞を受賞(平成2年5月)した時も、百周年記念館の廊下ですれ違いざまに、心温まる労いのことばをいただきました。直接の接点がない先生だっただけに、ありがたくお言葉を拝受いたしました。
 当時の私の指導教授とはあまり仲がよくなかっただけに、個人的におことばをかけてくださることが、嬉しくて心に滲みる思いでいます。

 閑話休題
 武井先生にはコンピュータの初期からの知り合いです。私が『新・文学資料整理術パソコン奮戦記』(桜楓社、昭和61年)を刊行した時にお手紙をいただいて以来です。
 2年前にも、私が知らなかったこととは言え失礼なことを書いてしまい、武井先生からやんわりとご指摘をいただきました。
 次の記事の末尾にある、《コメント欄》をご覧いただければ、武井先生の優しさと、私の迂闊さがわかっていただけるかと思います。

「JISカナ・キーボードの存続が危うい」(2011/7/24)

 また、武井先生が指導しておられた大学院生の数人には、私の所でアルバイトをしていただいたり、総合研究大学院大学で学位を取るお手伝いをしたり、埼玉大学へ留学で来ていた大学院生の研究のお手伝いや、中国の東北地方へ案内してもらったりと、枚挙に暇がありません。それでいて、研究分野が異なることもあって、直接お目にかかってお話をしたことはほんの数回です。
 気持ちのいいほど、さっぱりした関係なのです。

 それにしても、今回は私の調査と認識不足により、武井先生がすでに発表なさっていたことも知らずに、新しい資料として紹介してしまいました。同じ資料を、視点と切り口がまったく異なり、お互いが補完する関係となる報告となったことは、偶然とはいえ幸いでした。
 それにしても、私の方が失礼をしたことに違いはありません。

 自戒の念を込めて、ここに報告しておきます。
posted by genjiito at 23:59| Comment(0) | □池田亀鑑
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