その最後の2枚に関して、そこに写っている2人の女性については、編者としての当て推量で名前を特定しておきました。入江たか子と伊藤智子(としこ)です。しかし、依然として確証が得られないままに、今日も調査を続けています。
「アルバム・池田亀鑑(昭和七、八年)」の3枚目には、次のような説明を付しています。

編者は、池田亀鑑が池田芙蓉の名で冒険ロマン『馬賊の唄』を書いたことと、女優入江たか子が昭和7年に「入江ぷろだくしょん」を創立し、その第1作が溝口健二監督『満蒙建国の黎明』だった状況等から、この写真は入江たか子へのインタビューという場面を想定している。(379頁)
こう言うためには、その前段階で、この写真の女性が確かに入江たか子であることを決定しておく必要があります。
これまでに、いろいろな資料を探し回り、次の3点の写真に行き着きました。いずれも、昭和7年11月から昭和8年11月までの写真です。

写真の左から、その出典は以下の通りです。
『処女作・出世作・代表作 映画花形大写真帖』(『冨士』昭和9年新年号付録、ただし後半落丁)/大阪朝日新聞(昭和7年11月25日7面)/大阪毎日新聞(昭和7年11月25日8面)
この最初にあげた『冨士』の付録は、「江戸漫歩(66)国立国会図書館で資料を調べる」(2013/7/22)の後半部分で報告した資料です。日本国内では、高知県立図書館にしかないものです。
それを、近所の図書館に配送していただき、館内閲覧という制約はあるものの実物を見ることができたのです。
この写真にしても、似ている、とか、似ていない、では堂々巡りです。
いまだに、確たる証拠を探し続けています。
もう1人の伊藤智子についても、まだ決め手に行き当たっていません。
『もっと知りたい 池田亀鑑と「源氏物語」第2集』では、この4枚目の写真に次のような編者のコメントを付しました。

あくまでも今は推測の域を出ないが、中央の女性は女優の伊藤智子、その右に池田亀鑑、と編者は想定している。(380頁)
もしこの女性が伊藤智子であったなら、この写真はまさしく源氏物語劇の上演が中止となった昭和8年11月22日前後のスナップ写真ということになります。伊藤智子は夕顔役をするはずでした。この周りの男性陣の名前もわかれば、この弾圧事件の背景がわかる貴重な資料となります。
昭和10年のベストワン作品となった成瀬巳喜男監督の『妻よ薔薇のやうに』(『日本映画傑作全集』の1巻として収録されたビデオテープ版)を観ました。伊藤智子が、誇り高い歌人役を美事に演じています。
登場する伊藤智子の表情を、一時停止や巻き戻しを繰り返しながら、丹念に見比べました。その結果、池田亀鑑の左に座る女性と、この映画に出て来る伊藤智子が同一人物である確信を得ました。
ただし、これもまだ傍証となる資料を探さなくてはいけません。
そんなこんなで、最近私は昭和初期の情報を、当時の雑誌や新聞をひがな捲りながら、幅広く調査し収集しています。相当増えてきたので、少しずつ整理にかかろうと思っています。
なお、私が俳優の顔写真を確認するために図書館で利用した資料で、あまり一般的ではないものは以下の通りです。これ以外で参考になる情報がありましたら、ご教示いただけると幸いです。
(1)『芝居と映画 名流花形大写真帖』
『冨士 新年号 第4巻第1号 付録』
昭和5年12月3日印刷納本/昭和6年1月1日発行
大日本雄弁会講談社
※坂東簑助/入江たか子
(2)『芝居と映画写真大観』
『講談倶楽部 新年号 第22巻第1号 付録』
昭和6年12月5日印刷納本/昭和7年1月1日発行
大日本雄弁会講談社
(3)『俳優大鑑』
昭和10年10月1日調査/昭和11年1月15日発行
歌舞伎書房
(4)『俳優名鑑』
大正13年9月27日印刷/大正13年10月1日発行
杉岡文楽堂
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