2013年08月08日

藤田宜永通読(15)『野望のラビリンス』

 パリのバーに、日本人の女流画家が登場します。
 おしゃれです。そして、カルバドス。
 このお酒に憧れて、私も一時期飲んでいました。

 私立探偵鈴切の登場の仕方は粋です。最初に依頼を受けた仕事は、一匹の猫を探すことでした。
 背景に、さまざまな音楽が流れます。藤田宜永の特徴でもあります。

 ところが、依頼された仕事は死体で見つかります。猫探しと殺人事件が絡みながら、テンポ良くパリの下町風な場所で話が展開します。小気味いいのです。

 ゲイと娼婦とホモの話を間に挟みながら、異文化体験とでもいう、フランスらしい味と香りがします。

 情景描写は、ほとんどありません。行動と心の中が語られていきます。
 車が物語のスピーディーな展開に加わっています。

 フランスの中の日本文化が紹介されていて、楽しく読めます。日仏文化交流についても、読み進む中で実感させてくれます。

 武器の密輸や二重結婚のことなど、終盤は忙しく展開します。
 最後は、謎解きです。ただし、説明が少しくどいかな、と思いました。

 登場する日本人が、パリに馴染んでいます。日本人でありながらフランス人というスタイルが、藤田宜永らしい小説といえます。
 かつて読んだものを、引っ張り出してきて再読しました。若さがあって、楽しめました。
 藤田宜永のデビュー作品です。【2】
 
 
初出:カドカワノベルズ『野望のラビリンス』
   昭和61年(1986)10月、書き下ろし
posted by genjiito at 23:58| Comment(0) | □藤田通読
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