2013年07月21日

吉行淳之介濫読(11)「原色の街」

 昭和20年初頭の、ごくありふれた庶民的な日常から、色彩豊かな露地裏の原色の街へと移行します。娼婦の街です。ただし、風俗小説ではありません。
 男は女に、物質感を与えるだけの存在にしか過ぎない、という表現はシャープです。
 「愛することは、この世の中に自分の分身を一つ持つことだ。」(124頁)というのは、吉行の作品ではしばしば見掛ける言葉です。感情を具体的なもので感じる吉行の理会法がうかがえます。
 「烈しく打つかるような音」(130頁)という言葉があります。この語はどのような用いられ方をするものなのか、後で調べてみましょう。
 本作のキーワードは「原形質」だと言えます。
 乾いた筆致で、男と女の心の中を丹念に綴っていきます。その透明感と無機質なところが吉行の特色です。
 さまざまな色彩が光として発せられています。それでいて、その光が拡散しているせいか、私の中では収束しないのです。読んでいて、話に集中できなかったのは、どうしてなのでしょうか。
 この作品は何度か読んでいます。それなのに、いまだに掴み切れないものとなっています。今回は、と思っていても、やはり話が四方八方に飛び散っていくのです。
 今回読み終えて思うことは、作者が文章を大幅に書き替えたことに起因するものではないのか、ということです。自分の理解力の不足は今は措くとして、作者との相性の問題ではなくて、改稿によって、物語の中の光が束にならずに拡がってしまっているのではないか、ということです。
 この作品は、あらためて読む必要がありそうです。【2】
 
 
〔メモ〕
 今回は、『われらの文学14 吉行淳之介』(昭和41年、講談社)で読みました。
 初出誌:『世代 14号』(昭和26年12月)
 昭和27年1月、第26回芥川賞候補作品となる。
 昭和30年の春〜夏に、昭和26年に発表した「原色の街」をもとに書き下ろす。
 昭和31年1月に新潮社より刊行。
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | □吉行濫読
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