2013年06月09日

学習院女子大学での中古文学会 -2013 春-

 今年の中古文学会は、学習院女子大学が会場です。
 
 
 
130608_seimon
 
 
 

 永井和子先生が学長をなさっていた学校なので、非常に親しみを感じます。始まる前に、先生と少しお話をすることができました。今回の貴重書の展示で、その解説資料に池田亀鑑と三条西本に関する資料を掲載していますよ、と早速教えて下さいました。ご高配に感謝しつつ、まずは展示本を拝見しに行きました。
 なお、近日中に刊行となる『もっと知りたい 池田亀鑑と「源氏物語」第2集』(新典社)では、永井先生との対談が巻頭にありますのでお楽しみに。その時の余話は、「永井和子先生との対談余話」(2012年7月19日)に報告した通りです。

 今回の学会では、2日目の日曜日の最後に国冬本に関する発表があります。永井先生とご縁の深い大学で、永井先生の縁者である前田善子先生がお持ちだった国冬本の発表があるのです。国冬本にとっても、これにまさる紹介の場はありません。これを機会に、若い方々が本文研究にも興味をもってもらえたら、と楽しみにしています。なお、国冬本の研究発表の司会は私が務めさせていただきます。私にとっても、緊張する学会となりました。

 さて、土曜日の初日は、神野藤昭夫先生(放送大学客員教授、跡見学園女子大学名誉教授)の講演からです。タイトルは「始発期の近代国文学と与謝野晶子の『源氏物語』訳業」です。
 興味深い話なので、楽しみにして行きました。
 
 
 
130608_kannoto
 
 
 

 まず、明治十年代に近代国文学がスタートした頃の実態を語られました。初期には実用重視のために、官立大学の文学部で『源氏物語』が講じられることはなかったようです。知らなかったことが資料をもとにしてたくさん話題となり、現在の文学部などの衰退に思いを馳せながら、話に引きずり込まれてしまいます。

 次に在野における出来事として、与謝野晶子と『源氏物語』の出会いへと移りました。これからが、本日のメインテーマとなります。
 幻の『源氏物語講義』と小林天眠の件では、晶子は「逐次的講義」をしようとしていた、と言われます。個性的な講義であった、とも。残されている僅かな書簡や自筆原稿をもとにして、先生のお考えが展開されていきます。晶子の『新訳源氏物語』は2系統あるとか、『新新訳源氏物語』の成立事情にも及びました。
 晶子の草稿から刊本に至るまでの行程が、資料をもとにして炙り出されていきました。
 先生の調査に何度かご一緒させていただき、鞍馬寺や与謝野晶子文芸館で晶子の自筆原稿を見たり、後日その写真撮影に立ち会い、それを国文学研究資料館が原本画像データベースとして公開することに成功したこと等々、お話の背景にも思いを致しながら拝聴しました。
 スライド写真を駆使し、原稿の分量をグラフにして示されるなど、お見事なプレゼンテーションを堪能しました。

 その晶子も、昭和15年5月5日に、池田亀鑑と大弐三位のことでやりあったその翌日、脳溢血で倒れるのです。神野藤先生のお話の最後は、「晶子の訳は自身の文学としてある。」ということで結ばれました。
 講演の最後にサプライズとして、晶子が『源氏物語』の「桐壺」巻を朗読している肉声を会場に流されました。与謝野晶子という歌人が、『源氏物語』を訳した文学者として聴衆の瞼に蘇る、という演出でお話を閉じられました。

 時間があれば、もっと聞きたかった、との思いを強く抱きました。
 意義深い話を、ありがとうございました。

 神野藤昭夫先生先生には、NPO法人〈源氏物語電子資料館〉の監事お引き受けいただいています。また、先生の教え子の多くが、NPOの運営に関わっています。今後ともご一緒にお仕事をさせていただく中で、折々に日々の調査研究の一端を、学生さんたちと共に学ばせていただくことを楽しみにしています。

 神野藤先生の講演の後は、お2人の研究発表は申し訳ないのですが失礼して、貴重書を拝見しました。私が学部生だった頃に調査させていただいた『伊勢物語』とは、ガラス越しにではありましたが30数年振りに対面しました。
 さらに、徳田和夫先生ご所蔵の『源氏物語』の絵と古筆切れには、目が吸い付けられました。徳田先生には、後日の調査をお願いしました。いつでもどうぞ、と温かく聞き入れてくださいました。
 徳田先生は学習院女子大学の国際文化交流学部長をなさっており、国際的に大活躍をなさっています。國學院大學の後輩でもある私が、海外の日本文学研究について情報を整理していることを、好意的に評価してくださっています。すばらしい先輩が見てくださっていることは、後に続こうとする者には励みにもなり、ありがたいことだと思っています。

 また、出版社との打合せも念入りにしました。いろいろと抱え込んでいる仕事があり、こうした折に日頃の怠慢を詫びながら、今後のスケジュールの確認をすることになります。何かと忙しい1日となりました。
posted by genjiito at 22:04| Comment(0) | ◎源氏物語
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]