日本の古典藉に関して、全国に散在するそのすべてを調査し、さらにフイルムやデジタルの画像として収集するのが、国文学研究資料館の大きな仕事です。これは一般に公開されているので、全国各地の所蔵先に足を運ばなくても、立川に来れば多くの典籍や資料が画像として確認できるのです。これは、計り知れない恩恵を、研究者をはじめとする多くの方々に提供しているのです。
この悉皆調査のために、全国にたくさんの調査員の先生方がおいでになります。そのみなさまが年に一度集まり、調査の確認と情報交換をするのです。北海道から九州までの各大学や機関の先生方80人がお集まりでした。
担当する地域の先生方との打ち合わせを終えると、後半は講演会です。
今回は、専門的で硬い題目が並んでいました。しかし、私はこれを楽しみにしていました。
落合博志先生(国文学研究資料館)は「仏書から見る日本の古典籍」という題で、古典藉の本の形態や装訂に関するお話でした。特に、あくまでも仮称だとしながらも「双葉装」というものに関する話は、おもしろく聞きました。糊を使っている粘葉装によく似てはいても、糊ではなくて糸や紙縒りで綴じた本のことです。「折紙双葉装」については、実際に紙を折ってその仕組みを体験できました。
堀川貴司先生(慶應義塾大学付属斯道文庫)は「漢籍から見る日本の古典籍─版本を中心にして─」と題する講演で、紙に印字されている文字を中心とした話でした。図版を多用しての話だったので、よくわかりました。
今回の話で、古典籍に見られるルビの問題は、私がいままで注意していなかっただけに、そのありようがおもしろいものだと再認識しました。『源氏物語』でも、異文注記なのか読み仮名なのか、私はこれまであいまいなままで処置してきました。写本などにおける本文書写の伝承なのか、写本を読む上での補助的性格のルビなのか、今後はよく実態を見ていきたいと思います。
私自身が不勉強なために持ち合わせていない知識を、こうした機会に補うことになります。さらには、視点を変えて考えさせてもらえるのです。今日もいいヒントをたくさんいただけました。ありがたいことです。
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