無国籍小説とでも言うべき作品です。そして、何となく妖艶な雰囲気が漂っています。妖しい様子をことばで紡ぎ出そうとする姿勢が明らかです。ただし、私は話の内容に集中できず、何度も行きつ戻りつしながら読み直しました。あまりにも説明的な文章でした。飾りの字句が多すぎるように思われます。目の前で展開しようとする魔術を、作者が解説者よろしく語るために、読んでいて中身に入っていけないのです。
そして、結末も私にはよくわかりません。人間の世界以外にすばらしい所がある、ということなのでしょうか。視点を変えて読み直してみたいと思います。【1】
※初出誌『新小説』大正6年1月号(大正5年12月作)
■「玄奘三蔵」
冒頭は、リグベーダの英訳文で始まります。中程にも、英文が置かれています。谷崎の意図が、まだ私には理解できていません。
谷崎は、インドの秘密は幽玄な微妙な観念だと言います。それ以上には、詳しくは述べていません。
ラーマーヤナの詩句についても、尼を通して語られます。美しい声がラーマーヤナの歌を気高いものにする、と。そして、詩は人間のことばの中で一番神に近いものだとも。
三蔵は、ただインドの行者の修行を見る立場に徹しています。三蔵の目を通して、行の意味を読者に問いかけるのです。果たして何の意味があるのかと。
谷崎は、少し批判的な視点でインドの宗教者を見つめています。仏教については触れていません。【3】
※初出誌『中央公論』大正6年4月号(大正6年3月作)
■「詩人のわかれ」
夏にインドへ行く話が出てきます。
北原白秋をめぐる実話だとのことです。ただし、話はまったく拡がることなく閉じられます。
私には、単なる記録としか思われません。まったく意味がわからない文章でした。【1】
※初出誌『新小説』大正6年4月号(大正6年3月作)
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