2013年04月17日

読書雑記(63)山本兼一『赤絵そうめん』でお茶のイメージトレーニング

 山本兼一の〈とびきり屋見立て帖〉の第3冊目である『赤絵そうめん ―とびきり屋見立て帖』(山本兼一、文藝春秋、2011年11月)は、今の私の古道具趣味と茶道に対する興味と一致することが多く、楽しく読めました。
 前2作は文庫本でした。移動中に読むのに、文庫本はコンパクトなので重宝します。しかし、本作がなかなか文庫化されないので、待ちきれずに単行本で読みました。
 
 
 
130415_akae
 
 
 

■「赤絵そうめん」
 坂本龍馬の土佐弁が、いかにもそれらしく聞こえてきます。読み進んでいて、楽しくなります。
 高価な万暦赤絵の鉢でそうめん食べる女の子。その背景には、道具屋の事情があります。その中で、きれいな商いを目指す真之介とゆず夫婦をめぐる、心落ち着く話です。【3】
 
初出誌:『オール讀物』2010年2月号
 
 
■「しょんべん吉左衛門」
 御恩と奉公に直面する中で、自らの信念を貫く真之介が、気持ちよく描かれています。
 話は前話の赤絵の鉢の後日譚です。明るく爽やかな話に仕上がっています。【3】
 
初出誌:『オール讀物』2010年5月号
 
 
■「からこ夢幻」
 真之介のお点前が見物です。今、私がそのお稽古をしているところなので、あたかも目の前で、話も所作も展開しているように錯覚します。作者は、相当の茶人のようです。
 お茶の力が、芹沢鴨も黙らせるのです。お茶のもつ魅力が伝わってきます。私が好きな「放下着」という禅語も出てきます。ますます茶人の世界が拡がります。
 本話も、上品できれいに仕上がっています。【3】
 
初出誌:『オール讀物』2010年8月号
 
 
■「笑う髑髏」
 源頼朝のご幼少のみぎりの髑髏のくだりだけが、一読の後の印象として僅かに残りました。
 相撲と見せ物小屋の興行話には、まったく興が沸きませんでした。一息入れて、というところでしょうか。【1】
 
初出誌:『オール讀物』2010年11月号
 
 
■「うつろ花」
 名物の茶道具の話に釣り込まれ、時間を忘れて読み耽りました。目の前に道具が広げられているようで、イメージが膨らみます。京の古道具屋さん巡りをする楽しみが、さらに増えました。
 彫三島の茶碗の貸し借りについての話に展開します。そして、夕去りの茶事へと。話題に興味があるだけに、とにかく楽しいのです。自分が少し経験した茶事へと思いが連なり、心浮き立つ思いでページを繰りました。
 まだ私がお稽古を始めたばかりの頃に、先生に誘われるがままにお茶事に行きました。何も知らずに行ったのです。しかし、それがよかったと思います。作品の行間に、自分が見聞きしたことが埋もれており、それに気付かされるのが、非常におもしろいのです。最後の落ちも絶妙です。【5】
 
初出誌:『オール讀物』2011年2月号
 
 
■「虹の橋」
 桂小五郎登場。三条実美も。
 ゆずが、三条公に薄茶を点てた後に、虹が月にかかって現れたのです。茶碗は、最初に菊花天目、二服目は虹の橋。作者の遊び心が満載です。茶の湯の組み合わせの妙が、存分に楽しめます。
 勤王と佐幕が蠢く激動の世を背景にチラつかせながら、お茶と道具の世界がゆったりと展開しているのです。国事に奔走する志士たちや新撰組の心の内が、古い道具を通して炙り出されています。【4】
 
初出誌:『オール讀物』2011年5月号
posted by genjiito at 21:15| Comment(0) | ■読書雑記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]