2013年03月13日

読書雑記(61)森見登美彦『四畳半神話大系』

 森見登美彦の『四畳半神話大系』(角川文庫、2008・3)を読みました。『太陽の塔』に続く著者第2作目です。
 
 
 
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 おもしろい構成になっています。4話ある物語のそれぞれの冒頭と末尾は、いずれもほぼ同じ文章です。第4話である最終話だけは、少し捻ってありますが。

 その冒頭部分で、「生後間もない頃の私は純粋無垢の権化であり、光源氏の赤子時代もかくやと思われる愛らしさ、……」とあるので、『源氏物語』のことも関係して語られるのかと思いきや、ここ以外にはまったく触れられることはありません。少し残念でした。この光源氏ということばは、作者のどこから出てきた語彙なのか、興味を持ちました。

 主人公は、下鴨泉川町の下宿に住む大学3回生です。このあたりは私が自転車で散策する地域なので、身近な場所として親近感をもって読み進めました。

 同じ下宿人であり、下鴨神社の祭神だと名乗る師匠とは、奇妙な関係を持つようになります。また、鴨川デルタと呼ばれる葵橋や出町あたりの様子が、しばしば語られます。この私の散歩エリアが舞台になっているのは、イメージが膨らみやすくてうれしい限りです。

 賀茂川周辺を舞台として、主人公たちはとにかく自由かつ楽天的に学生生活を謳歌しています。その明るさには脱帽します。物語のテンポも、賀茂川を散策する歩調で語られるので、心地よく読み進められます。

 ただし、途中であまりにも同じ世界が繰り返し展開し、拍子抜けする話が長々と続くような錯覚に陥ります。こうした語り口に、私はなかなか慣れることができません。
 同じような趣向の話が、工夫をして変化を付けてあるといっても、ワープロでよく使うコピー&ペーストのような文章の塊に出会うと、読む気が萎えます。その緩急自在な構成を楽しむべきなのでしょうが……

 深い意味は探らず、楽しめばいいのでしょう。しかし、コピー&ペーストの展開に、私はやはり飽きが来ました。

 それでも、つい読み進んでしまうおもしろさが、この物語にはあります。奇想天外さが、読みながら気分転換になっていいのです。ありえないことが、いかにもまことしやかに語られのに耳を貸すのも、この作者の筆の力を味わうことになるのです。

 第3話で、言い寄る女性から理屈っぽい思考を繰り返して逃れる場面は、秀逸だと思いました。描写がうまいのです。

 再読する機会があれば、同じパターンを繰り返しながらも、それぞれに変化を与える構成や心中および場面描写を、特に意識して読んでみたいと思っています。【2】
 
(付記)
今回読んだのは、単行本『四畳半神話大系』(太田出版、2005・1)に加筆修正した文庫本です。
posted by genjiito at 00:07| Comment(0) | ■読書雑記
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