2013年02月07日

井上靖卒読(158)「冬の来る日」「街角」「春の入江」

■「冬の来る日」
 密会の途中で乗っていたタクシーが交通事故に巻き込まれた男は、大したことのないことを確認すると、とにかく女と逃げることにしました。その後、子供を持つ女の方に用事あったことがわかり、その子の学校へ行きます。同じ頃、自分の会社の近くで火事があったことを知ります。その店へ立ち寄ることにし、女は喫茶店で待つことになります。しかし、そこで女は知り合い合うのです。その後、2人で赤坂に向かうと、途中で女が子供の服を受け取りたいと言います。何とも、次から次へと日常生活の雑事が紛れ込んで来ます。
 その後、2人は何もないままに、もう会うこともない予感を持って別れるのでした。人間の行動に、意外な出来事が突発的に起き、予定の行動が意図しない方向に流れていく様が、軽妙に語られます。『井上靖全集』に初めて収録された作品です。【3】
 
 
初出誌:オール読物
初出号数:1960年2月号
 
井上靖全集6:短篇6
 
 
 
■「街角」
 見合いをするとき子。美容院へ行く途中に、かつて親しかった中越と出会います。中越は3人の子供を連れていました。その間の6年間という時の流れに、とき子の思いは複雑です。そんな時、一緒にいた3人の子供の内の1人が、突然いなくなります。大変な思いをした挙げ句、美容院にも行けなくなり、そのままの姿で見合いの席に臨むことにしました。ありまのままの自分を見てもらうことで、気持ちは落ち着くのでした。昔の恋人と出会い、そこには子供が介在しているというのは、井上がよく用いる設定です。これも、『井上靖全集』に初めて収録された作品です。【3】
 
 
初出誌:週刊女性自身
初出号数:1960年2月3日号
 
井上靖全集6:短篇6
 
 
 
■「春の入江」
 昭和30年代の春のことです。富士山と駿河湾が見える漁村の一流旅館を経営する夫婦は、有名な画家が来ることになり、てんてこ舞いです。特に、おかみの三都子は美術学校への進学を断念した経緯もあり、人生の意義を変えるほどの一大事となったのです。この画家に尽くす内に、惹かれるようになったからです。
 死を決意していた画家と三都子は、共に死んでもいいと思います。彼の死後、三都子は果たしてあれが愛だったのかと煩悶します。夫の安次は、終始妻を温かく見守る立場として描かれています。人間の心の内面が、きれいに浮かび上がる作品となっています。【3】
 
 
初出誌:週刊文春
初出号数:1961年3月15日号記念特大号
 
集英社文庫:青葉の旅
井上靖小説全集27:西域物語・幼き日のこと
井上靖全集6:短篇6
 
時代:昭和30年代、春
舞台:(静岡県?)の富士山と駿河湾が見える市、半島の漁村

 
 
 
〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 00:13| Comment(0) | □井上卒読
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