2013年01月22日

井上靖卒読(155)「騎手」「春寒」「春のうねり」

■「騎手」
 人間関係が語られた後、馬と騎手の動と静が巧みに描写されています。後半は、時間が止まったかのような、映像としてのシーンがみごとです。この切り替えが、読後に印象深く残像として、読者の目に浮かびます。
 なお、本作は匿名で発表されたものです。それだけ、井上にとっては自信があったと言えるでしょう。【4】
 
 
初出誌:群像
初出号数:1953年4月号
 
集英社文庫:夏花
井上靖小説全集10:伊那の白梅・大洗の月
井上靖全集3:短篇3
 
 
 
■「春寒」
 事業に失敗した男とその妻の心の交流が、男の視点で語られます。京都や九州へ、最後となるはずの旅に出かけます。家が人手に渡ることも知らずに、その家に飾るものを買う妻に、事実を語ろうと思いながらも何も言えないままに旅を続けます。妻とは別々に東京へ帰ることになった時、男はかつて同棲していた女と飛行機で一緒になります。この女が、うまく話の中に入り込み、生きた存在として男の一面を照らし出します。男と女の関係を、おもしろく切り取っています。【3】
 
 
初出誌:小説新潮
初出号数:1953年4月号
 
集英社文庫:楼門
井上靖小説全集10:伊那の白梅・大洗の月
井上靖全集3:短篇3
 
 
 
■「春のうねり」
 2人の男の間に生きるさだ子。京都、九州、信濃、伊豆、東北への旅が語られます。本作は、人物設定が崩れていて、井上靖らしくありません。読んでいて、2人の男と女との距離が中途半端なのです。話の盛り上がりもありません。書くのを急ぎすぎて、内容が煮詰められなかったようです。【1】
 
 
初出誌:サンデー毎日
初出号数:1953年5月新緑特別号
 
井上靖小説全集10:伊那の白梅・大洗の月
井上靖全集3:短篇3
 
 
 
〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 00:06| Comment(0) | □井上卒読
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