お才は、そこへ奉公に来た小間使いの娘。これに巳之介の心は奪われました。
お才の描写を見ると、谷崎のフェティシズムが溢れています。
中盤からおもしろくなります。芝居のような雰囲気がいいと思います。
内容とは関係ありませんが、目の前からいなくなってほしいことを、「成らう事なら唐天竺へ行つて了つて貰ひたい。」(123頁)と表現しています。ここには、谷崎のインドへのマイナスイメージがあります。かねてより気になっていることなので、メモとして残しておきます。
後半になり、店を追い出されてからのお才の変貌した姿が見物です。卯三郎の役回りも見所です。
江戸時代の草紙ものの香りをぷんぷんさせた、色恋に懲りない男と女の物語です。人間の描写が特異で、心理劇としての構成など、その後の谷崎とのつながりを楽しめました。
ただし、長編の割には間の取り方がバラバラな感じがしました。舞台を意識した習作として位置づけたらいいのかもしれません。【2】
初出誌:『中央公論』大正4年9月
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