2012年07月20日

授業(14)日本文学の用語解説集を構築すること

 この授業も、今日で最後となりました。
 私は、受講生のみなさんと一緒に考えることを意識して、議論の素材を提示しつづけてきたつもりです。
 教えるというスタイルではありません。意見を出してもらい、そこから問題を掘り下げよう、という手法でした。
 反応を見る限りでは、毎時間うまくいったようです。
 今日はその仕上げとして、懸案のグロッサリーのサンプルデータから約800例の具体例を示して、この問題について共同討議をしました。

 私の手元には、小西甚一の『日本文藝史』(全5巻、講談社、1985-1992)からサンプリングデータをとったリストがあります。これは、さまざまな人の手を経てきたものです。このデータを例にして、日本文学に関する英語表記について考えてみました。ここでいうグロッサリーとは、用語解説とでも言える、小辞典のことを言います。

 先週から、グロッサリー構築のために加工中の資料を学生さんに提示して、その問題点を考えていました。叩き台とする資料は、上記『日本文藝史』に留まらず、各種日本文学史の英語版から適宜抜き出した文学関連の用語のリストです。

 まず、『浜松中納言物語』の研究をしている人が学生さんの中にいたので、その作品をどう呼ぶか? ということから見ました。


浜松中納言物語
Hamamatsu Chunagon Monogatari
The Nostalgic Counselor

「Nostalgic」は「郷愁」と訳せそうです。「Counselor」は「相談役」くらいでしょうか。

 ウーンと唸ってしまいます。これでは、海外の多くの研究者と、日本文学に関する理解を深め、議論をするにはイメージを共有しにくいと思います。もし、これが最適だとしても、日本側としてはこの手の表現で作品を呼ぶことになると、馴れるのに相当の時間を要することでしょう。一言で言えば、ピンとこないと思われるのです。固有名詞の呼び方は、いろいろと微妙な問題が付随します。

 『源氏物語』は「The tale of Genji」でいいでしょう。「Genji monogatari」とする必要はないでしょう。
 物語と和歌も、一定のわかりやすい法則が必要です。いろいろな呼び方が広まる前に、小異には目をつむって一通りの呼び名を確定したいものです。

 人名については、「藤原定家」を「FUJIWARA no Sadaie」とするか「FUJIWARA no Teika」にするかという問題があります。これは、日本でどう発音するかに関わるものです。私は、古典文学では原則として音読みでいいのでは、と思っています。つまり「ていか」の方をよしとします。

 なお、こうしたグロッサリーを構築する上で参照すべきものとして、コロンビア大学のハルオ・シラネ先生が精力的に刊行なさっている一連の日本文学関連の書籍が、現在では非常に参考になる資料です。折を見て、手元の資料に手を入れて、いくつか試してみたいと思います。

 とにかく、日本語と英語の両表記による対照一覧を、いろいろな方とのコラボレーションを通して構築したいと思います。すでに、言語に堪能な方々が、さまざまな試みをされているはずです。そうした情報も集める必要があります。

 この件に関して、私は語学の専門ではないので、あくまでも問題点の提示に留まります。しかし、広く検討する場を設定することであれば、何かお役にたてるかもしれません。すでに着手・推進しておられる方からの情報を、お待ちしています。
posted by genjiito at 23:02| Comment(0) | ◎国際交流
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