2012年05月30日

新刊『古典籍研究ガイダンス』のすすめ

 『古典籍研究ガイダンス 王朝文学をよむために』(国文学研究資料館編、笠間書院、2012年6月8日発行、2,800円)が刊行されました。
 
 
 
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 日本の古典文学作品の研究をこころざしている方や、古典籍に興味のある方、そして何よりも日本の古典文学のことを知りたいと思っている方に、とにかくお勧めできる本です。
 「王朝文学をよむために」という副題が付いています。しかし、この本は日本の古典文学全般を見渡しています。
 まずは書店でこの本を手にして、ページを繰ってみてください。きっと手元に置いて読みたくなるはずです。

 この帯(腰巻き)に記されていることを転載します。この本の性格がよくわかるからです。

自分の力で
どう調べ
どう考えればいいか



わからない
ことがあるから
こそ、
きっと研究は
面白い!



▼古典籍にはどのような情報が含まれているのか。
それらの情報はどのようにして引き出して、
研究に役立てていくことができるのか。
研究方法と成果をわかりやすく
紹介する本です。

▼王朝文学についてより詳しく知りたい、
もっと深い知識を身につけたい、
自分自身の力で調べ考えたい方へ。
必携の入門書です。



 本書は、以下の31名の研究者が、1項目10ページ前後の分量で執筆しています。

執筆者一覧[掲載順]
浅田 徹/寺島恒世/古P雅義/藤田洋治/妹尾好信/鶴崎裕雄/齋藤真麻理/藤島綾/山本登朗/松原一義/伊藤鉄也/今西祐一郎/原 豊二/勝俣隆/西本寮子/小川陽子/福田景道/久保木秀夫/小林一彦/田渕句美子/小林健二/日下幸男/神作研一/安原眞琴/田野慎二/小川剛生/鈴木淳/海野圭介/落合博志/野本瑠美/森田直美


 しかも、「です・ます」調のやさしい文章であることと、入門書であることを意識した内容なのです。語られる対象は難しそうです。しかし、具体的な事例をあげて解説する語り口なので、通読にも適しています。
 図版写真として、写本や版本などが82点も掲載されています。
 私自身も『源氏物語』の1項目を担当しているので、よろしかったらご笑覧を。

 内容の細目を確認するためにも、この本の〈目次〉もメモとして以下に転載します。
 これを通覧しただけでも、その多彩なメニューが囁きかける声が聞こえることでしょう。
 特に、後半の「Part.2 本をみる・さがす」は、国文学研究資料館が編集したからこその、研究者必読の事項が並んでいます。これが知りたかった、ということが満載のはずです。

 市販されている、活字で組んだ校訂本文だけで古典文学作品を読んでいる方にとっては、古典籍の原点に立ち返り、自分が手にしている作品本文というものを見つめ直す機会にもなろうかと思います。
 今や、活字本での日本古典文学研究が全盛の時代です。しかし今一度、作品本文や研究資料の意義を再確認すべき時です。多くの資料が、写真版や影印本で刊行されています。さらには、全国に散在する古典籍の原本が、国文学研究資料館に行けばマイクロフイルム等を通して確認できる環境が整備されています。現代は、実に恵まれた研究環境の時代にいることに気付かされます。
 そうであればこそ、本書が、調べたり考えたりする上で、多くのヒントを与えてくれると思います。


〈目次〉

 序…今西祐一郎
 introduction ―わからないことがあるからこそ、きっと研究は面白い

Part.1 読みが変わる・変える

■和歌
 01勅撰集………
  『古今集』を読む―定家本に残るある写本の痕跡…浅田徹
  『新古今集』の本文―校本の作成に向けて…寺島恒世
 02古今六帖………
  貼紙の形態と本文の錯簡から底本を推察する方法
   ―黒川本『古今和歌六帖』写本と寛文九年版本…古P雅義
 03私家集………
  私家集伝本の本文―歌仙家集本系統の本文を中心に…藤田洋治
  歌物語的私家集・日記的私家集…妹尾好信
 04歌学歌論………
  「作者自筆本」から何が汲み取れるか―『近代秀歌』の定家自筆本冒頭部を見る…浅田徹
 05古今伝授………
  古今伝授…鶴崎裕雄
 06和漢朗詠集………
  橋の下の菖蒲―『和漢朗詠集』を読む…齋藤真麻理

■物語
 01伊勢物語………
  本文と絵が織りなす世界―『伊勢物語』二三段の場合…藤島綾
  古注釈書を読む―『伊勢物語闕疑抄』の場合…山本登朗
 02多武峯少将物語………
  訪書の喜び―多武峯少将物語の諸本調査…松原一義
 03源氏物語………
  書写により変異する本文―『源氏物語』を写本で読む…伊藤鉄也
  女房の「たばかり」―『太平記』から『源氏物語』を読む…今西祐一郎
  抜書の方法―『源氏物語』の享受世界―…原豊二
 04狭衣物語………
  作り物語から御伽草子へ―『狭衣物語』と「狭衣の草子」並びに天稚御子…勝俣隆
 05とりかへばや………
  写本で伝わる物語―後期物語と『とりかへばや』…西本寮子
 06中世王朝物語………
  写本の書写年代と物語の成立…小川陽子

■歴史物語
 01弥世継………
  幻の「弥世継」をさがす―世継物語(歴史物語)の継続と変転…福田景道
 02栄花物語………
  写本のかたち、本文のちがい―『栄花物語』の場合…久保木秀夫

■日記・随筆
 01土左日記………
  著者自筆原本の復元―『土左日記』の場合…小林一彦
 02枕草子………
  『枕草子』本文から見る先行文学享受の有り様―清少納言が見た『古今和歌六帖』…古P雅義
 03紫式部日記………
  現在の作品形態を超えて考える―『紫式部日記』…田渕句美子

■芸能
 01能………
  世阿弥は王朝文学からどのように能を作ったか―能「井筒」を例として…小林健二

Part.2 本をみる・さがす

■基礎知識
  書誌学の手引き―本をみる・さがす前に

■書誌学
 01奥書・識語………
  奥書・識語…日下幸男
 02刊記………
  刊記―歌書の刊・印・修…神作研一
 03古筆切………
  古筆切…久保木秀夫
 04短冊………
  短冊―美の小宇宙…神作研一
 05絵画………
  絵入り写本をみる・さがす―『扇の草子』を例に…安原真琴
  版本の挿絵を読む―歌書を中心に―…田野慎二
 06禁裏・幕府………
  禁裏・宮家の蔵書―砂巌所収「伏見殿家集目録」をめぐる問題…小川剛生
 07国学者………
  近世の注釈と創作の間―賀茂真淵の『伊勢物語古意』をめぐって…鈴木淳

■文献資料・文献情報
 01マイクロ・紙焼etc………
  マイクロ資料・デジタル画像の活用 …齋藤真麻理
 02複製本・影印本………
  複製本・影印本の活用…海野圭介
 03翻刻・校本・校訂本………
  翻刻と校訂―日本古典文学作品を読むために…小林健二
 04web・DB 、蔵書目録………
  「新出」伝本のさがし方―『今鏡』の場合…久保木秀夫
 05歴史研究の立場から………
  日記・記録の写本について…小川剛生
 06原本………
  古典籍の原本を見る…落合博志

■人間文化研究機構 国文学研究資料館 図書館利用案内

 掲載図版一覧
 あとがき…小林健二
 執筆者紹介


 この本は、〈読む事典〉だと言えます。
 私は、今すこしずつ読み出しました。通勤時間が長い私にとって、電車の中で一つ二つ三つと読み耽っています。知っていること、知らなかったことの確認ができ、知的好奇心をいやが上にも掻き立ててくれる内容なので、ページを繰るのが楽しくなっています。
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | ■古典文学
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