2012年04月10日

井上靖卒読(134)「白い手」「仔犬と香水瓶」「贈りもの」

■「白い手」
 北国の高校の柔道部における20年ぶりの同窓会で、戦時中のことを思い出します。
 戦死した2人の友のことを思うにつけ、あの当時が一番すばらしかったと思います。
 実話を語っているようです。20年前のことを、男4人で友情を温め合った時へとタイムスリップです。マドンナ役の李花子の登場は、井上靖の作品によくあるパターンです。純粋な青春時代の一頁となっています。
 友との信頼が、話の背後にしっかりと根を張っています。人間の温かさがよく描けています。【3】
 
初出誌:オール読物
初出号数:1952年6月号
 
井上靖全集3:短篇3 
 
 
■「仔犬と香水瓶」
 天川風子(あまがわかぜこ)という一風変わった絵描きがおもしろく語られます。山脇は大学の美学教授。2人の男の変わった一面がぶつかるところがおもしろいのです。ただし、この作品が描こうとしているものが見えてきません。人間の持つ、一味違った人間味を描き残そうとしたのでしょうか。よくわからない男の世界です。妻の杉子だけが常識人のようです。【1】
 
初出誌:別冊文藝春秋
初出号数:1952年6月28号
 
文春文庫:貧血と花と爆弾
井上靖小説全集4:ある偽作家の生涯・暗い平原
井上靖全集3:短篇3
 
 
■「贈りもの」
 時計をめぐって、夫婦の心のありようが浮き彫りになります。お互いが相手のことを思いやって10年。思いがけない事態で、あらためて2人の心が照らし出されました。その描写が巧いと思います。真物ということが話を引っ張っていく、最適な一コマが語られています。
 この作品は、読売新聞の「コント・コンクール」で、読者の投票によって第1位を受賞しました。
 読売新聞に発表してから、『井上靖全集』に初めて収録された作品です。【4】
 
初出紙:讀賣新聞
初出日:1951年6月9日
 
井上靖全集3:短篇3
 
 
〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 22:37| Comment(0) | □井上卒読
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