2012年03月14日

『十帖源氏』の登場人物名を検討

 新宿アルタ横の喫茶店にあるレンタルスペースで、『十帖源氏』の現代語訳をつくる会を続けています。
 今日は、登場人物の名前をどうするかとか、訳の中でどう明記して補ったらいいか、ということで意見を出し合いました。

 今は、第3巻の「空蝉」 の現代語訳を確認しています。
 例えば、こんな例で立ち止まりました。

 原文にある「つらき人のため」を、昨年の最初の訳では「薄情な人(空蝉)のため」としていました。
 今、最初から現代語訳を新しい方針で見直しをしています。そして、登場人物名で再検討をすることになったのです。

 当初から、翻訳されることを意識した、海外の方々が翻訳しやすい現代語訳を目指して来ました。
 そして、新しい方針というのは、『十帖源氏』に書かれている本文を忠実に訳すのではなくて、『源氏物語』の話がよくわかるような現代語訳を外国語に翻訳する方々に提供しよう、ということです。意訳と言われているものに近いかと思います。
 翻訳者が現代語訳を見て迷うようでは、世界各国の人々に『源氏物語』のよさが伝わる翻訳はできない、と思われるからです。

 そのためにも、厳密で正確な現代語訳よりも、優しい現代語で、なおかつわかりやすい文章になるように工夫を繰り返しています。

 さて、上記の「つらき人のため」は、「薄情な空蝉のため」とすることになりました。
 カッコを付けて補った人物名を、そのまま訳文の中に入れようということです。そして、これまでにカッコで括って理解を助けるために補っていた語句も、カッコを外して現代語訳の中に溶け込ませよう、という確認もしました。

 これによって、訳文が原文から少し離れます。しかし、わかりやすくて翻訳しやすい訳文になっている方がいい、ということになったのです。

 また、原文に「老いたる女のこゑにて」とあるところを、最初は「年老いた女(民部の命婦)の声で」と訳していました。しかし、ここは登場人物を増やさない方が海外の読者が混乱しないということを配慮し、「年老いた女の声で」として、主要ではない人物はあえて特定しない、ということにしました。

 また、『源氏物語』はたくさんの登場人物がいます。しかし、多くなればなるほど読者への負担は増えるので、各巻に5、6人くらいの人物を特定し、その人物を現代語訳の巻頭に注として列記しておくことも決まりました。これで、人物呼称が統一でき、巻を隔てて呼称が違う人物の特定がしやすくなります。

 「空蝉」巻でいえば、登場人物は光源氏、空蝉、小君、軒端荻、紀伊守くらいに留めるのです。それ以外は、「彼は」「ある男は」「彼女は」「ある女は」というようにしてしまうのです。
 なかなか割り切れないことが多いと思われます。しかし、この方針を立てることで、さらに現代語訳がスッキリします。

 近日中に、これまでに公開してきた「桐壺」巻以下、第9巻の「葵」までの訳を、新たに立てた方針で見直したものをアップする予定です。

 日本人のためではない現代語訳というものに、意外と苦戦しています。しかし、『源氏物語』を世界中の方々に読んで親しんでもらうためにも、その翻訳は欠かせません。その前提となる現代語訳の提供においては、最初のうちに問題点を明確にし、早い段階で方針を固めたいと思います。

 いつものように2時間ほど検討会をし、新宿駅から地下鉄で帰ろうとしていた途中で、地震のために電車が急停車しました。震度3だったため、安全のために停車したのです。
 車内の電気が消えなかったからよかったものの、この地下からどうして逃げようかということに神経が集中しました。
 妻にメールを送ったところ、宿舎も震度3で、相当揺れたようです。

 東京は連日の地震です。震度は3止まりとはいえ、何となく不気味な日々です。
 ここしばらくは、この地震のことで話題は持ちきりだと思います。
 何もないことを祈るのみです。
posted by genjiito at 23:55| Comment(0) | ◎源氏物語
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