2011年11月27日

2日目も稔りの多かった国際集会

 「第35回国際日本文学研究集会」も2日目です。
 今日も盛りだくさんの発表でした。その中から、私が特に注目したものを2つだけ、メモとして残しておきます。
 
 
 
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(1)「『落窪物語』の和歌
      ─法華八講との関連から─」園山千里

 園山さんは、ポーランド国立ヤギェウオ大学准教授です。
 園山さんについては、本ブログ「ポーランド語訳『源氏物語』の新情報」(2010年11月20日)と、「ポーランドの源氏物語研究」(2011年2月10日)において、ポーランド語訳『源氏物語』について貴重な情報と本を送っていただいたことを書きました。
 直接現地におられる平安文学の研究者からいただいた情報なので、心強い思いでいます。海外には、日本文学の研究をなさっている方がたくさんおられます。日本文学が世界文学の中の一つとなっていることを実感しています。
 今日の園山さんの発表は、お人柄というべきでしょう、落ち着いて丁寧に語りかけておられました。海外での生活による話し言葉の不自然さもなく、聞き取りやすい研究発表でした。
 内容も、手堅く物語本文に書かれていることを確認しながら、配布資料をうまく使って展開されました。
 言おうとされることは、『落窪物語』は巻三から和歌の役割が大きく変わることを確認し、それによって和歌と散文を意識的に機能させている作品だ、ということだったように思います。
 今回の研究集会のメインテーマが「〈場所〉の記憶─テクストと空間─」だったので、それに合致した、まとまりのある発表でした。
 その後の質疑応答で、『落窪物語』全体における和歌の機能について質問がありました。これに対して、和歌の機能について充分に説明しきれなかったので、これが園山さんにとっての今後の課題と言えそうです。
 発表が終わってから、このことで園山さんと少しお話をしました。問題意識が法華八講にあったこともあり、これからさらに和歌の機能について勉強をして、自分なりの考えを披露できるように頑張ります、と力強く言っておられました。非常に前向きなので、今後の活躍が楽しみです。
 
 
(2)「王朝における歌合の空間
      ─村上朝天徳四年内裏歌合を受とめた後冷泉朝期の歌合─」赤澤真理

 赤澤さんは、日本学術振興会特別研究員で国文学研究資料館特別研究員でもあります。現在は、アメリカのハーバード大学で研究活動を展開している、私も注目している若手研究者です。
 本ブログでは、「源氏絵を寝殿造から見た好著」(2010年3月30日)で、その研究のユニークさを紹介しました。
 また最近では、「コーツ先生ご所蔵の源氏画帖は江戸狩野派の粉本」(2011年8月12日)で報告したように、英国ケンブリッジ大学のコーツ教授ご所蔵の源氏絵について、宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の狩野探幽筆とされる源氏物語図屏風がよく似ている、という貴重なご教示をいただきました。
 源氏千年紀の2008年には、国文学研究資料館で開催した特別展『源氏物語 千年のかがやき』の図録作成や資料展示において、細やかな心遣いでお手伝いしていただいたことも忘れられません。
 今日の最後のセッションは、私にとってはお世話になりっぱなしのお二人の発表でもあったのです。

 さて、今日の赤澤さんの研究発表も、いつものように鮮やかなものでした。
 歌合という場と空間の実態が、スクリーンに映し出される図や絵によってよく理解できました。歌合は、視覚的な芸術世界として開催されていたことが明らかとなりました。そして、女性が重要な役割を果たす空間が設定され、演出されていたことも。
 さらには、座る位置や場所という着座の序列については身分制度の崩壊も関連していて、歌合という私的な空間であったからこそそのような変化が可能となったようです。まさに、赤澤さんが得意とする寝殿造の空間を、歌合を例にして、これまで誰も言及しなかった研究成果が発表されたのです。
 教わることの多い内容でした。そして、園山さん共々、今回の国際集会のテーマにふさわしいものとなっていました。
 発表内容に聴き入っていたために、スナップ写真を撮り忘れていました。またいつか、ということにしましょう。

 こうした若手の生き生きとした充実した研究発表は、知的興奮と爽やかさが伝わってきて心地よいものです。
 お二人のますますの活躍が楽しみです。
posted by genjiito at 23:54| Comment(0) | ■古典文学
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