2011年11月18日

名和先生の連続講演「歌合(1)」

 名和修先生の「古典資料の創造と伝承」と題する連続講演の第4回目の報告です。
 今日は、2回予定されている「歌合」の第1回目です。
 
 
 

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 いつものことながら、先生の講演は前置きも楽しみです。

 陽明文庫の資料は、歴史関係のものが大多数を占めています。しかし、調査・閲覧者の4分の3は国文学関係者だそうです。名和先生ご自身も国文学の出身なので、調査者に対する理解がある背景が納得できました。

 さて、歌合というと、萩谷朴先生の『平安朝歌合大成』を抜きには語れません。
 昭和13年の夏のことです。当時東大の学生だった萩谷先生は、京都大学図書館に寄託されていた近衛家の古文書類の中から「類聚歌合」を見つけられました。このことは、当時東大の助教授だった池田亀鑑先生との連名で発表されました。しかしこれはその後、京大と東大で大問題となるのです。
 ただし、今日の名和先生のお話では、その微妙な問題は簡単に触れられただけでした。萩谷先生に京都で直接この問題で話を聞いたということに留めて置かれました。萩谷先生の「勇み足」というニュアンスで語られただけです。

 私は、学生時代に萩谷先生の授業を受けました。ちょうど歌合の科目でした。今思えば、直接いろいろと質問をするんでした。私は和歌に対する問題意識を持っていなかったので、『堤中納言物語』に関してだけでも聞いておくべきでした。

 また、私は「池田亀鑑」という人物について調べているので、萩谷先生が池田先生の『校異源氏物語』の校本作成作業をなさったことや、池田先生の博士論文である「古典の批判的処置に関する研究」の仕事を手伝われたことに関心を持っています。しかし、今日は名和先生が池田先生に直接逢ったことがないというところから、講演では「池田亀鑑」という名前は出ませんでした。このことは、また別の機会にでも伺うつもりです。

 今日のお話は、陽明文庫蔵で国宝となっている「十巻本歌合」の「歌合第六」がお話の中心となりました。
 資料として配布された「十巻本歌合総目録」は、非常に貴重なものです。目録には46回の歌合の記載があります。この資料をもとにして、平安時代の歌合の実態を浮かび上がらせてくださいました。

 陽明文庫にあるのは「巻六」だけですが、巻一、二、三、八、十を伝えるのが前田家です。「前田家には、近衛家もかなわない」とおっしゃった時には、会場が沸きました。

 歌合の巻別の内容の説明は、参会者にわかりやすいように、丁寧に語ってくださいました。
 主催者をランク付けして分けていることも。

 「巻三の所に「以上後冷泉」となっていないので、後冷泉天皇の頃に目録が作られた。」
 「巻八に、「殿」と「家」と分けている。九条流には「殿」を付ける。道長に「故殿」、頼通家のことを「殿」としているので、十巻本の編纂作業は頼通の近くでなされた。」
 「チーフは源経信(帥殿)だった。巻五を書いたのは帥殿だったと思われる。」

 などなど、興味深い指摘が続きました。

 とにかく、陽明文庫にある国宝の写真を見ながら、巻六を追っていきました。
 948年に開催された天暦二年の陽成院での歌合を、詳しく見ていきました。
 当時の歌合やその編纂作業の実態がよくわかるお話でした。

 なお、歌合については、今回の国文学研究資料館の特別展が「陽明文庫における歌合資料の総合的研究」という共同研究の成果を展示するものなので、ぜひとも展示図録を手にしていたただきたいと思います。
 今日の講演会でも、名和先生がこの図録の価値を強調なさっていました。

 いつものように、先生の講演も時間が押し迫ってきました。予定していた半分だが、今日はこの辺で時間通りに終わります、とおっしゃり、前回同様に「ちょうど3分超過や」といって終わりとなりました。
 後でお聞きした話では、このクールダウン(クーリングオフ)の3分間が、聴衆にとってはとても大事なのだそうです。さっと終わってはいけないのだと。余韻を持たせる3分間ということです。納得です。

 講演会が終わってから、先生を慰労しようということで、立川の駅前に出かけました。そして、有志10人弱でご一緒にお酒を飲みながらの懇談となりました。先生は大好きな日本酒を、私は焼酎をいただきました。
 その席で、先生がいつもお持ちの赤い扇子の話になりました。普通男性用は25センチですが、先生の扇子は30センチと特別製なのです。毎年新しいものに替えておられるそうです。
 ネクタイもいつも赤なので、このブログ用に写真を撮らせていただきました。カフスも赤い珊瑚で、偶然ですが背景にも赤い壁紙が写っています。
 
 
 
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 余計なことは書くな、とのことなので、この辺にしておきましょう。

 明日は静岡で講演が。そしてトンボ返りでまた立川にお出でになり、来週月曜日に展示替えをなさいます。
 お年を感じさせないほどに、エネルギッシュに飛び回っておられます。
 
 名和先生ご自身による手作りの展示が見物です。
 時間があれば、何度でも立川の展覧会にお越しください。
 日本文化の精粋を見ていただけます。
posted by genjiito at 23:51| Comment(2) | ■古典文学
この記事へのコメント
いつも楽しく読ませていただいております。
私のブログで先生の「もっと知りたい池田亀鑑と源氏物語」を紹介させていただきました。
事後承諾でもうしわけありません。
下記のページです。
http://sironekotocyatora.blog32.fc2.com/blog-entry-1246.html
Posted by オイデPaPa at 2011年11月19日 21:07
ありがとうございます。
『源氏物語』の本をいろいろとお持ちだったのですね。
これからもよろしくお願いします。
ますますのご活躍を、楽しみにしています。
Posted by genjiito at 2011年11月19日 22:03
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