2011年11月14日

藤田宜永通読(12)『夢で逢いましょう』

 この『夢で逢いましょう』(2011年2月14日、小学館)は、572頁もの厚さがあります。
 昭和30年代に流行ったテレビ番組や商品や歌謡曲などをタイトルにした連作です。ノスタルジック・ミステリーとありますが、ミステリーの要素はほとんどありません。
 中身は本の厚さと反比例しています。ただし、この本のカバーデザインは気に入っています。
 
 
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■お笑い三人組
 昭和30年代のテレビ番組などを取り上げて、旧懐の情を発動させることから始まります。
 このネタは、若者にはなかなか伝わらないので、それを作者がどう展開させるかが楽しみです。【2】

■バイタリスとMG5
 バイタリスとMG5の話は、後半になっておもしろくなります。ただし、整髪料の扱いは中途半端なままです。きれいに着地を決めるか、オチのほしいところです。
 最後に、オードリーというオウムのことが語られます。オウム探しとなるのです。【】2

■カミナリ族と缶ピー
 話が少しずつつながってきました。
 頑固一徹な父親が印象的です。藤田の作品では、このタイプの個性的な男がうまく描かれます。文章も、細かい描写ではなくて、粗筋でぐいぐいと引っ張って行くこの感じがいいと思います。
 最後に、突然ですが、オウムのことに話が向きます。この話題が、以降の章をつなげていくのでしょうか。【3】

■長い髪の街頭詩人
 新宿のバーの話で、吉行淳之介のことが紹介されています。ほんの数行ですが、藤田が私と同世代であることがわかるくだりです。
 オウムの話が中心になります。その合間に、これまで通り折々に、懐かしいグループサウンズや俳優などが顔を出します。【3】

■OH!モウレツ
 オールデイズの曲と懐かしいテレビドラマなどの思い出を背景に、軽快に話が展開します。ヤクザの息子の話が面白いと思いました。ただし、それもすぐに別の話に切り替わります。
 今と40年前が行ったり来たりします。【2】

■ゲバゲバ
 還暦を迎えた三郎は、オウムのオードリーを探し続けています。 男と女のドタバタ劇が展開します。それにしても、話に現実味がないところが藤田らしいと思いました。【1】

■悲しき60才
 坂本九や渡辺トモコなど、今では懐かしい名前が出て来ます。もっとも、ネットで当時のことを調べた結果をいかにも思い出したかのように書いているのが、どうも気になりましたが。【2】

■あの時君は若かった
 オウムのオードリー探しがおもしろくなりました。ヤクザっぽい男たちが出て来ると、藤田の話は精彩を放ち出します。
 記憶が行ったり来たりし、人間関係がもつれた後でおもしろく結びついて行くのが楽しめます。標題の曲名は取って付けたものですが、話はうまく仕上がっています。【4】

■ジェットストリーム
 回想される過去に、カビ臭い印象が最後まで残ります。どうもモタモタしていて、筆致が冴えません。
 ジエットストリームには、私もたくさんの思い出があります。それだけに、話の中身と溶け合っていないので、もったいないと思いました。【1】

■夢で逢いましょう
 最後まで盛り上がりがありません。
 中身のない、薄っぺらな作品でした。【1】

 全10話を読み終えました。しかし、全体を通しての印象は「空」です。
 ダラダラと旧懐談が語られただけです。これから藤田は、作家としてどうするのでしょうか。そんな心配をしてしまいました。【1】
posted by genjiito at 23:55| Comment(0) | □藤田通読
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