2011年10月30日

吉行淳之介濫読(7)「谷間」「祭礼の日」

■「谷間」
 
 長崎に原爆が落とされた八月九日のことから語られます。
 長崎にいた友からの手紙は、すでに亡くなった友からのものとなったのです。
 主人公は銀座の出版社に務めています。ビルの谷間に、ひっそりと静まりかえった所があります。そのように、人間も人に知られない、ひっそりとしたものがあると言いたげです。
 別の友が女と熱海で心中します。
 この作品の男と女のありようは、私にはまだ理解できません。
 この作品の原型とされるものに『花」があります。「吉行淳之介濫読(3)「餓鬼」「火山の麓で」「花」」」(2010年4月 4日)を参照願います。【2】

※第27回芥川賞 昭和27年/1952年 上半期の候補作
  前年の昭和26年/1951年、下半期の候補作として「原色の街」(『世代』昭和26年12月)があります。
 吉行淳之介は、「驟雨」で第31回芥川賞(昭和29年/1954年上半期)を受賞します。「驟雨」については、次回書きます。
 
初出誌 『三田文学』昭和27年6月号
 
 
 
■「祭礼の日」
 
 夢の世界と現実、異常と日常が、うまく溶け合って語られていきます。
 靖国神社の祭礼で写真を撮るくだりは、乾板写真なので今ではおもしろい描写です。この時が200円なので、今のプリクラ並みでしょうか。
 サーカスや見世物小屋のことを、もっと吉行流に語ってほしいところです。
 吉行は、この靖国から戦争のことへとはつなげていきません。時代のせいなのでしょうか。吉行の関心の違いなのでしょうか。作者の心象に浮かぶ自殺した視の夫人は、非常に魅力的な女性として描かれています。【3】

初出誌 『文学界』昭和28年
posted by genjiito at 23:52| Comment(0) | □吉行濫読
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