2011年10月18日

読書雑記(46)福田美鈴『わが心の井上靖』

 今夏、静岡県にある井上靖文学館へ行った折に入手した『わが心の井上靖 いつもでも『星と祭』』(福田美鈴、井上靖文学館、2004年6月)を読みました。
 
 
 

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 この時のことは、「クレマチスの丘にある井上靖文学館」(2011年8月21日)に記した通りです。

 本書には、筆者が日常生活を通して接した、我が師と慕う井上靖の側面が、非常に具体的に語られています。
 こうした記憶をもとにした文章には、個人的な行動範囲での感懐という制約があります。個人の視点での人物描写なので、全体像が見えないことがままあるからです。しかし、井上靖を理解する上で、本書には詩誌を通して知ることのできる参考情報に満ちていると言えます。

 「ネパール行のこと」(132頁)では、『星と祭』のモデルが明示されています。これもまた参考になります。

 私が興味を持ったのは、井上靖が住んでいた場所の移動を整理した、「旧『焔』(昭和四年一月−同十二年七月)から井上靖消息」という3頁ほどの資料です。井上靖の居住先が追えるので、大変参考になります。
 ここで判明したこととして、「上京して下宿するのが昭和六年の夏であったことで、東京ぐらしは一年にも満たない期間であった。」(66頁)という指摘があります。具体的には、「六年七月号 東京市外巣鴨町上駒込八三六 鈴木方へ転居」という記事のことです。

 私はまだ井上靖の年譜を正確に調べていないので、これまでの研究成果を知りません。いずれは、研究史を確認しながら自分なりに井上靖を追いかけていきたいと思っています。今は、「井上靖卒読」として全作品を読破することを目指しているところです。
 とにかく、この資料のことは記憶しておき、折々に参考にするつもりです。

 なお、本書の文章を読んでいて、敬語表現の粗雑さが気になりました。井上靖への親近感から、師への距離感が狂ったとも言えます。しかし、それが父を中心にして語られる時にも、その門弟の方々への言葉遣いにもみられるので、師と父の偉大さから敬意が乱れたと思われます。
 もし増補改訂をなさることがあるならば、ぜひ見直して補正なさるといいかと思います。
posted by genjiito at 23:20| Comment(0) | ■読書雑記
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