2011年10月10日

読書雑記(43)『我ら糖尿人、元気なのには理由がある。』

 今年の8月下旬から糖質制限食に興味を持ち、即実践を始め現在進行中です。

 そんな中で『我ら糖尿人、元気なのには理由がある。―現代病を治す糖質制限食』(宮本 輝、江部 康二、東洋経済新報社、2009/8/7)を読みました。
 
 
 
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 糖尿病に興味のない人には一顧だにされない本でしょう。しかし、日々頭を悩ませていた私にとっては、興味深く我が事として読みました。
 以下、記録として記します。

 この本は、糖尿人を自認する2人が繰り広げる対談です。特に宮本輝氏は自分が直面することでもあり、江部先生への質問が具体的です。それに対する江部先生の回答が、これまた詳しく医者として研究者として答えているので、それがおもしろいのです。
 具体的な事実を取り上げ、しかもそれを研究的な視点で解説した、息の合った対談となっています。

 以下、拾い読みをメモとします。


宮本 (前略)三ヶ月くらい経った頃だったと思いますが、後藤医師が糖質制限食の効果を認めて、こんなことを言ったんです。
「これは医学界で話題にしてみないといけないな。ただ、医者や栄養士なんかは認めないだろうけれどね」
 僕は、「何でだ」と尋ねました。
「おれたちは生まれてからずっと糖質を摂って生きているんだぜ。それを一切なしにするなんて、何か不都合が起こるんじゃないかと考えてしまうのは無理ないよ」
「そんな事言っても、おれは何ともないじゃないか」と言っておきましたが。
江部 後藤先生のようにフレキシビリティーのある方でも、常識の壁というか、心理的な壁はなかなか越せないようですね。
宮本 そうなんですよ。仏教の言葉に、「賢位に居す(けんいにこす)」というのがあるんです。
 修行を積んだと本人も言い、世の中もそう思っている僧侶がいるとします。そんな僧侶がある程度の位にまで進むと、自分の頭のなかで考えている仏教観、思想の範囲に閉じこもろうとしてしまうんです。自分が積んだ修行、その高い位置、つまり賢位から出ようとしなくなる、そのことを「賢位に居す」と言うんです。
江部 高い位置の賢位は、権威ということでもありますね。医者の権威、看護婦の権威、栄養士の権威、糖尿病専門医の権威、それに居すということですね。
宮本 そうです。それはもう、あらゆる世界にあります。医者の世界だけでなく、世の中の専門職と言われている人は、自分の信じてきたやり方でその地位を築いたわけですから、どうしてものその権威を信じてしまうんです。こうした人たちの最大の問題点は、自分の知識とか知恵などの範囲の外にあるものに対して、どうしても心を閉ざしてしまう、心を開こうとしないんですね。
江部 それが常識の壁といいますか、先生のおっしゃる賢位ならぬ、「権威に居す」ということになってしまうわけですね。どうしても保守的になる。(32〜33頁)


 ここを読んでいて、ああ私の場合もそうだった、みなさんそうなんだ、と思い納得しました。
 私が体験したことは、「お医者さんが勧める薬物治療に足踏み中」(2011年9月15日)に書いた通りです。糖尿病の専門医である主治医の先生は、私が始めた糖質制限の食事について露骨に無視なさいました。

 その時の様子を、上記ブログから引いておきます。これを書くにあたっては、相当ものの言い方を抑制した表現にしてあります。先生にもプライドがあることを承知してますし、批難することが何も生み出さないことを知っていたからです。

 しかし、その診察のときの私の心情はというと、糖質制限の食事を始めたという私の説明とその1ヶ月間の数値を頭から無視しないで、質問にはそれなりに糖尿病の専門医として答えてほしかったので、とにかく不愉快な思いでした。

 その日のブログは、腹立ち紛れに書かないようにし、つとめて平静を装いながら記事にしたつもりです。患者の立場で医者のことをこれだけ配慮する必要があるのかは、正直言って迷いました。しかし、素人が専門医を批判しても、何も生まれないのです。それよりも、このままこのお医者さんの診察を受け続けていていいのか、それが私の一番の迷いでした。

 以下が、その日のブログに書いた、先生と私のやりとりの一部分です。


 医者の立場からは糖質制限をした食事による糖尿病への効果は、医学的にわからないことが多いものなので勧められない、とのことでした。
 また、脳の活動には糖質は絶対必要なので、糖質を制限するのではなくてご飯類も少しは食べる必要がある、ともおっしゃいました。
 糖質制限の食事では、栄養のバランスが崩れるし、脂肪も多くなりすぎるそうです。
 また、お風呂に入れば体力を相当消耗するので、血糖値が下がるのは当たり前です、とも。

 どうやら、医学の世界では異端的な考え方である糖質制限の食事に同調した私への不快感が、こうした無視の背景にあるように感じました。実際、帰ってからネットで見ると、この件では普通の糖尿病専門医は否定的な対応をなさるのが一般的なようです。

 先生からは、あくまでもあなたは糖尿病なのだから、今日から薬を飲むことを考えるべきだと思うがどうですか、と同意を求められます。これまでずっと、薬による治療を足踏みして延ばしていたことが、今日は現実のものとして具体的に今日からの問題として提示されました。しかも、朝だけでも薬をのんでみては、とのことです。

 しかし、それでも私は薬を使いたくない気持ちを伝えると、この次まで様子を見ましょう、ということで診察は終わりになりました。
 帰ろうとして立ったままで伺ったことは、血糖値が高い状態の時間が長いほど、トータルとしてのヘモグロビンa1cの数値が高くなる、ということでした。確かに、食後2時間も血糖値が高いと、いろいろと問題なのでしょう。そのために薬で、食後の血糖値が高くならないようにするようです。

 持参した私の血糖値推移を示す資料をあまり見てもらえなかったので、最近の1時間後の数値は高いが、それからすぐに下降しているように思いますが、ともう一度お尋ねすると、食後60分から80分の数値が130くらいになることを目安にしている、とのことでした。それから言うと、私の場合は高すぎる、ということなのです。
 ほぼ毎日自分の血糖値を計測していることは、かねてより伝えてあったので、こうした具体的な対処方法を今回伺えたことは1つの目安になります。もう少し早く聞いていたら、前回7月の診察以来の食事方法もまた別のものを模索したと思います。


 次に引くのは、私にとって一番痛い話題が対談の中で交わされているものです。
 このことは、何か救いの道がないのか、今でも模索中です。


宮本 今日なんかお昼に料理番組を見ていたら、旨そうなちらし寿司が出ていて、「ああ食いたいな」と思ってしまいました(笑い)。
江部 寿司は最悪です。米の飯に砂糖まで入っていますからダブルパンチです。ここが堪えどころですよ。気持ちはわからないでもないですが(笑い)。


 私もじっと我慢です。お寿司のない日々に、もう慣れつつありますが……

 次は、私がかかっているお医者さんもおっしゃっていた、脳の活動にはブドウ糖が絶対に必要だ、という、上に引いた文にもある話です。あの時にも、ケトン体については一言も先生の説明に出てきませんでした。


江部 脳がブドウ糖しか利用できないというのは、完全に間違いなんです。単純に生理学的に間違いです。ただ、今でこそこんな大きなことを言っていますが、二〇〇一年に糖質制限食について徹底的に研究を始めるまでは、私も全然知らなかったんですけれどね。
宮本 某大病院の若い外科医が、「脳はブドウ糖しか使えない」と、懇々と僕に説教を垂れましたけれど。
江部 おそらく医者の九割九分がそう誤解しているでしょう。ましてや、普通の患者さんでは、ほとんどの人が脳はブドウ糖しか使えないと思い込んでいます。
宮本 現在でもそうですか、医者の九割以上が知らないと?
江部 私の知っている範囲から推測すれば、まず、そうでしょうね。
 脳がブドウ糖しか使えないというのは完全に間違いで、私のブログや本でも説明したんですが、脳は脂肪酸の代謝産物であるケトン体をいくらでも利用できるわけです。
 それに、糖質制限食にしたからといっても、別に低血糖になるわけじゃないんですよ。食事由来の糖質がなくても、アミノ酸や脂肪酸の分解産物を材料にして、肝臓が常にブドウ糖をつくっているんです。ですから、糖質制限食をしていても低血糖状態になることはまったくなく、人体に必要な血糖値を保ちます。
 だから、糖質制限食をしていても脳は、その肝臓でつくっている血糖を利用できるし、ケトン体も利用しているんです。(92〜93頁)


 最後に、「あとがき 常識の壁が打ち破られるとき」から江部先生の文の一部を引用します。


 (前略)『米国医師会雑誌(JAMA)』二〇〇六年二月八日号の論文で、五万人の閉経女性を八年間追跡した結果、脂肪を総摂取カロリー比二〇%に制限しても心血管疾患、乳がん、大腸がんリスクはまったく減少しないことが確認された。さらに『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』二〇〇八年七月一七日号に、「三二二人の成人を二年間追跡して、カロリー制限ありの脂肪制限食と、カロリー制限なしの糖質制限食の効果を比較検討した結果、糖質制限食が体重を減少させ、HDL(善玉)コレステロールを増加させた」という報告がなされた。また、医学の教科書『イラストレイテッド ハーパー・生化学 原書二七版』(上代淑人監訳、丸善)には、脳が脂肪酸の代謝産物のケトン体をエネルギー源とすることが明記してある。
 事実は動かない。糖質制限食の有効性は高尾病院での一二〇〇を超える症例から明らかだし、糖質制限食を頭から否定する三つの常識もこれらの事実によりはっきりと示されている。ところが、常識の壁とは恐ろしいもので、これらの明確な証拠があっても、一〇〇人中九九人以上の医師.栄養士が「脂肪悪玉説」「カロリー至上主義」「脳のエネルギー源はブドウ糖だけ」という無根拠な神話をいまだに信じているのが現状である。
 ところで、日々、糖質制限食の画期的な治療効果を目の当たりにし、また関連している研究文献に接しているうち、私が以前から抱えていた「本来の日本型の食生活」を求めるという課題が、次第に「本来の人類の食生活」とは何だったのかという根源的な疑問へと発展していき、この問いに自分なりの結論を出すことができたように思う。
(中略)
 食生活における三段階の変化に照らせば現代は精製炭水化物の時代であり、ミニスパイクの時代だと言える。これが急速に増えた現代病の元凶となっている。だから、人体にとって本来の食事とは農耕以前のもの、すなわち糖質制限食である。これが私の出した結論だった。(229〜233頁)


 以上、本書は新興宗教のプロパガンダではありませんし、私も新興宗教に洗脳されているつもりはありません。とにかく、まだ自分の身体で実験をしている段階です。その観点から見ても、本書は事実に即した内容に思えます。
 しばらくは、江部先生がおっしゃる方向で実験を続けていくつもりです。

 今は、血糖値の管理はおおよそ良好のように思えます。食事はすべて妻が最良のものを考えてくれます。その点では、何も問題はありません。ただし、体重が相変わらず増えません。これが、今直面している、頭を悩ませる問題です。

 胃癌によって胃を全摘出して1年。昨年の8月31日でした。それ以降、外科的には何も問題はありません。
 その代わりと言っては何ですが、食べ物を消化する、もしくは消化した後、というレベルでの壁が立ちはだかっています。
 手術前から問題となっていた糖尿病が、やっかいなものとして屹立しているのです。
 まだまだ、私の日常では食事との闘いが続いています。
posted by genjiito at 23:51| Comment(0) | ■読書雑記
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