■「誕生」(一幕)
中宮彰子のお産という、めでたい場面です。
わかりやすい展開で、ト書きも親切です。
皇子が誕生すると、文章博士が五帝本紀を読むなど、よく当時を調べていることがわかります。『紫式部日記』と『枕草子』を読んで、参考にしているようです。
明治43年という時代に、このテーマと内容がどう関わるのか、その背景が知りたくなりました。
ただし、これは前年に「帝国文学」(東京大学)へ投稿したが採択されなかったものです(全集第3巻末の「解説(伊藤整、274頁)」参照)。【2】
初出誌︰『新思潮』(明治43年9月号)
■「象」(一幕)
この「象」は、「天竺の獣を唐人が連れて来た」とあるように、東南アジアに目が向いています。民衆の会話にも、異文化理解の様が描かれます。華やかな舞台が目に浮かびます。
新しい時代を求める視線が新鮮に映ります。
たくさんの人物に語らせることで、祭礼という群衆の熱気がうまく描かれています。【4】
初出誌︰『新思潮』(明治43年10月号)
■「信西」(一幕)
自分の運命が見えた信西は、生きる気力をなくします。
信西の心中を、世の動静を、星と月がうまく活用され、信西の口を通して語られます。
追っ手に召し捕られた時に信西は、「星はまだ光って居るか」と最後のことばを言います。これがいいと思いました。現世を遠く離れた境地にいる信西が、みごとに描かれています。【4】
初出誌︰『スバル』(明治44年1月号)
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