2010年12月15日

吉行淳之介濫読(6)「ある脱出」「詩編」

■「ある脱出」
 娼婦弓子の胸に去来する不快感とは何かが語られます。
 自分で自分を作り上げていくことに目が向くようになった時、モノの見方が違ってくるのです。そんな中、ある男と結婚することになります。すると、特定の一人に対する娼婦という場所に置かれたことに、自己嫌悪を感じるようになりました。
 常態の女に憧れながらも、それへの復讐の気持ちを覚える弓子です。鮮やかな脱出をします。
 一人の女の心の変化を、ズームインとアウトを繰り返しながら、巧みに語っています。【2】
 
初出誌
『群像』昭和27年12月号(新人小説特集)

『吉行淳之介初期作品集』の「あとがき」には本作品について、次のように記されています。

私の作品が、名のある文芸雑誌に載った最初のもので、同年下半期の芥川賞候補作品に選ばれた。三十年に「原色の街」という長篇を書いたとき、この作品を部分および材料として使ったため、これまでの私の作品集には収めていない。単行本に入れるのは、今度が最初でまた最後である。(226頁)

 
 
■「詩編」
 冴え渡る月光の下、男の渇いたつぶやきが聞こえます。
 1944年から46年にかけての10編の詩が並んでいます。
 ここに描かれる月光は、カミソリのような切れ味で降り注ぐイメージがあります。
 前が見えない、その中で、作者は心の目で何かを見つめようとし、探しだそうとしています。【2】
 
 『私の文学放浪』(昭和40年春)に所収されたものです。
posted by genjiito at 23:47| Comment(0) | □吉行濫読
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