2010年12月05日

読書雑記(25)高田郁『銀二貫』

 高田郁『銀二貫』(幻冬舎時代小説文庫、2010.8)は、2009年6月に幻冬舎から刊行されたものを文庫化したものです。別シリーズの『みをつくし料理帖』の大阪版と言えます。
 
 
 
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 さすが、高田郁の時代小説、と思わせます。

 この作品は、大阪を舞台として展開します。やわらかい大阪言葉が、話を温かく包みます。関西出身の作家だけあって、ごく自然な言葉遣いです。

 温かい蒸し羊羹ではじまります。
 そして、この羊羹が最後に、感動的に取り上げられます。
 開巻一番、仇討ちの描写が活き活きとしています。会話のテンポがいいのです。快調に読み進めました。

 「商人の矜持」は、気持ちが晴れやかになる、いい話です。誠意の大切さが伝わってきました。

 「約束」は、完成度の高いものです。話の盛り上げ方、人間の情、そして前向きな姿勢など、力強く語られています。
 
 「興起の時」の最後で、半兵衛がこう言います。


「なお、松吉。一里の道は一歩では行かれへん。けんど、一歩一歩、弛まんと歩き続けたら、必ず一里先に辿り着ける。お前はんは、もう歩き出したんや。転んだなら立ち上がったらええ。簡単に諦めたらあかんで。」(312頁)


 何か、私自身への励ましのことばのように聞こえてきました。こんな意味の人生応援歌がありました。一見、浪花節的です。しかし、ここまで読んできて最後のこのことばは、読者をも勇気づけるものとなっています。

 最終章の話の閉じ方もうまいですね。
 盛り上げて、情感タップリに、そして静かに幕を下ろします。
 いい話を聞いた、という読後感を残します。【5】
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | ■読書雑記
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