2010年12月04日

読書雑記(24)高田郁『今朝の春 みをつくし料理帖』

 本作は、「時代小説文庫」として角川春樹事務所から2010年9月に刊行された、『みをつくし料理帖』シリーズの書き下ろし第4作品です。
 次作が待ち望まれます。
 
 
 
101125_takadakesano
 
 
 

■「花嫁御寮−ははきぎ飯」
 小松原の正体が判明します。回りくどかったように思えます。しかし、とにかくスッキリとしました。
 このことに話が集中したために、説明口調となり、膨らみがなくなってしまったように思えます。いつもの情味が少ないのが、物足りなさと寂しさを感じさせます。
 人の動きが変わるときの、中休みのような一章になっています。
 帚木というほうき草の実は緑色だとか。今のトンブリをめぐる話は、興味深く読みました。しかし、それまで。
 近づくと見えなくなる、という伝説の帚木のことを、もっと話に活用してほしいと思いました。『源氏物語』にも出てくる帚木なので、日本の伝統文化との絡みで、もっとおもしろくできたのではないでしょうか。【1】


■「友待つ雪−里の白雪」
 12年前の京阪で起こった大水のことを通して、澪と野江という2人の少女の生い立ちが、もの凄いスピードで描かれています。迫力があります。圧倒的な筆力で迫ってくることに、とにかく感心しました。
 澪を取り巻く人たちの、人情味溢れる行動も、読んでいて救われる想いを抱きました。【5】
 
■「寒紅−ひょっとこ温寿司」
 澪の周辺で起こる意外な出来事が語られます。突然の女の出現など、後半に緊張感が走ります。
 伊佐三のお百度参りが、話の展開の中にうまく溶け込んでいないように感じました。若い女も、話に馴染んでいません。話の構成が崩れてしまっているのが惜しまれます。親子の情に流されてしまったからでしょうか。【1】
 

■「今朝の春−寒鰆の昆布締め」
 登場人物の情け深い話で、作者は読者の目先を変えながら、ここまで繋ぎ止めて来ました。
 作者は、今度は料理で真っ向勝負の作品としています。
 料理が前面に出ると、この作者の話は輝きを増します。
 読み手の気持ちを明るくする、完成度の高い話に仕上がっています。【5】
posted by genjiito at 12:12| Comment(0) | ■読書雑記
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]