2010年11月26日

読書雑記(22)高田郁『花散らしの雨 みをつくし料理帖』

 本作は、「時代小説文庫」として角川春樹事務所から2009年10月に刊行された、『みをつくし料理帖』シリーズの書き下ろし第2作品です。
 快調に語られていきます。
 
 
 
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■「俎板橋から―ほろにが蕗ご飯」 13歳の少女ふきが、お手伝いとして澪の店に来ます。このふきが、愛らしく描かれています。作者の込めた想いが伝わってきます。
 店は、新しく九段下に開きます。私にとっては、病院通いをしていた道です。上京後も、このあたりを歩くので、ますます親近感をもって読み進めました。
 この章は、春の食材を通して、日本らしい季節感が溢れています。
 ツクシの袴を外す場面は、奈良の平群に住んでいた頃、母が山道で摘んできたツクシを、指を真っ黒にして剥いていた姿を想い出しました。
 種市が「ううむ」(43頁)と呻ります。次の頁で、種市は料理の出来の良さに感心して唸ります。60頁でも、種市が唸ります。井上靖の小説では、こうして呻る人物は舞台回しを請け負っていることが多いのですが……。高田作品ではどうなのでしょうか。この表現がある場面を集めてみたくなりました。
 ドラマの結末は心憎いほどです。読者の心を捕まえるのがうまい、と思いました。【5】
 
■「花散らしの雨―こぼれ梅」 清右衛門が呻きます(98頁)。澪を手助けする又次は唸ります(105頁)。どうやら、呻く男と唸る男がおもしろそうです。
 作者は毎回、読者がジーンと来るような場面を用意しています。
 幼馴染みとの熱い情の世界が、淡々と紡ぎ出されていきます。そして、ラストに指で狐の形を作って振るシーン。
 情感溢れる話を、上方の料理語りとともに、また聞くことが出来ました。【5】
 
■「一粒符―なめらか葛饅頭」 はしかという病気を中に立てて、親子の情愛を描きます。
 源斉が唸ります(107頁)。人と人との仲を取り持つ、食べ物の役割が伝わってきます。
 病気という深刻な内容のせいか、これまでに増して暗さが勝った話になりました。【3】
 
■「銀菊―忍び瓜」 話を大いに楽しんだ後、気持ちを静めるかのように、穏やかに話が展開します。
 中で、あまりの美味しさに、客が「うっ」と唸ります(231頁)。澪の想い人である小松原も、あまりの美味しさに「ううむ」と唸ります(284頁)。
 やがて大川の花火で、話は華やかに終わります。そして、それが澪の恋の始まりとなるのでした。【2】
posted by genjiito at 23:54| Comment(0) | ■読書雑記
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