2010年11月25日

読書雑記(21)高田郁『八朔の雪 みをつくし料理帖』

 これは、「時代小説文庫」として角川春樹事務所から2009年5月に刊行された、高田郁の書き下ろし作品です。『みをつくし料理帖』は、これを第1巻として、シリーズとして刊行されます。
 
 
 
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■「狐のご祝儀 −ぴりから鰹田麩」
 料理に打ち込む蕎麦屋の奉公人の澪は、冷静に料理を見つめ、その出来に情熱を傾ける。
 しかし、その生きざまの背景には、ついホロリとする物語が見え隠れするので。その加減がうまく語られています。
 文章がとても読みやすく、大阪弁が適度に雰囲気を作っています。東西の味の文化を教えてくれるところが楽しめます。
 さがり眉の澪と小松原という謎の男の取り合わせが、今後の展開を楽しみにさせています。
 久しぶりに、歯切れのいい文章と情の深みが、程よい読後感を残しました。
 巻末の料理帖が、また心にくいものになっています。読んだ後に2度おいしい想いをさせてもらえます。【5】
 
■「八朔の雪−ひんやり心太」
 澪の生い立ちが明らかにされます。
 大坂から江戸に来るまでの様子が、こと細かに、わかりやすく、そして情感たっぷりに語られます。
 登場人物に、悪人がいません。善人たちの情が通う話になっています。泣けるシーンが多いのは、かえって人情物語らしいサービスでしょう。
 最後の、心太に砂糖をかけるシーンは、絵になる場面が多い本作の中でも、月を背景にするだけに出色の出来映えです。【4】
 
■「初星 とろとろ茶碗蒸し」
 シリーズの難しさをどうするのかと注目しました。すると、第三作にして大転換。蕎麦屋を廃業にして、澪の店にするのです。大胆です。
 登場人物も、ますます個性が見えてきました。好調です。これで、物語は順調に続いていきます。
 この章でも、感動的な場面がいくつかあります。ご寮さんが澪のために、自分を犠牲にするくだりは圧巻です。人間の情を、タップリと見せてくれます。
 最後は、たっぷりと幸せな気分にさせてくれるなど、何とも心憎い話になっています。【5】
 
■「夜半の梅 ほっこり酒粕汁」
 これまで、いい脇役だったご寮さんが、情の中心に座ります。人の情が描かれます。盛り上げ方もうまいと思いました。
 突然の火事のシーンが、読者を緊張させます。そして、お店をなくした無念さが、しみじみと伝わってきます。
 澪は、幼馴染みのことを知ります。過去が美しく語られます。そして、挫ける心を奮い立たせて、ひたすら前へ向かって進んでいくのです。
 最後の友への言葉も、気が利いています。
 それにしても、小松原とは誰なのか。次が読みたくなります。【5】
posted by genjiito at 22:11| Comment(0) | ■読書雑記
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