その最終の共同研究会が、先週土曜日に開催されました。数えて、第17回です。よくぞここまで運営してこられたものだと、豊島先生のご苦心とご努力に対して、深甚の敬意を表したいと思います。
私も、最初から関わった一人として、最終回の会合には何とかして参加すべく、国文学研究資料館の事務といろいろと折衝を重ね、個人研究費による出張という形で久しぶりに上京しました。
私の調査研究活動は、関西方面では業務上の許可を受けていました。しかし、東京へ出向くとなると、別途許可を必要としていたのです。病気療養中といっても、実質的にはインターネット等を通していくつもの業務をすでにこなしていますが、書類上はなかなか面倒なことです。
とにかく無事に許可がいただけたので、身の回りの世話をしてくれている妻を伴って新幹線に乗りました。あまり体調はよくなかったのですが、どうにか無事に帰洛の途に就いたことなどは、一昨日の本ブログに記したとおりです。
さて、豊島科研の研究会は、次のプログラムで進行しました。
◆第17回「源氏物語の本文資料に関する共同研究会」
日時 11月13日(土) 13:00〜
場所 國學院大學 120周年記念2号館 1階 2102教室
内容
開会の辞:渋谷栄一(高千穂大学)
第一部 研究・報告1(13:00〜)/司会:菅原郁子
豊島秀範(國學院大學)
吉川家本(毛利家伝来『源氏物語』)の本文について
上野英子(実践女子大学)
山岸文庫蔵伝明融等筆源氏物語の書誌報告2
田坂憲二(群馬県立女子大学)
内閣文庫本系統『紫明抄』の再検討
神田久義(國學院大學大学院特別研究生)
外形的性質から見た米国議会図書館本
第二部 研究・報告2(14:50〜)/司会:神田久義
菅原郁子(國學院大學大学院特別研究生)
正徹本のありかとゆくえ
渋谷栄一(高千穂大学)
藤原定家筆・四半本系「源氏物語」本文データベースについて
中村一夫(国士舘大学)
仮名文テキストの文字遣
遠藤和夫(國學院大學)
注釈書中の室町語彙
第三部 最終報告(17:00〜)/司会:國學院大學
閉会の辞:豊島秀範
豊島先生のご高配により、私には無理をしないようにと、特に役割を与えられませんでした。感謝します。
今回も、いつものように資料を駆使しての手堅い研究報告が並びました。
この研究会での研究発表は、毎回充実しています。もっとたくさんの若い研究者の参加が得られたら、と、この日も思いました。
詳しくは、豊島科研のホームページ、及び科研の報告書をご参照ください。
報告書の入手を望まれる方は、ホームページを通して連絡を取られたらいいかと思います。
『源氏物語』の本文研究に関する最先端の情報が満載です。これを無視しては、今後とも『源氏物語』の本文については語れないはずです。
さて、この会に参加して、私は一つだけ悔いが残っています。
それは、この4年間を通して、最後まで、〈青表紙本〉〈河内本〉〈別本〉という、もう80年も前に池田亀鑑が提唱した、『源氏物語』の本文を3分類する考え方を土台にした発表がなされたことです。
『源氏物語』の本文は、写本の形態的な分類によれば、池田亀鑑の3分類もいいかもしれません。わかりやすいのです。ただし、それは昭和11年までに整理された分類での仕分けであることに注意が必要です。しかも、その後に確認された写本を含めて、写本に写し取られた『源氏物語』の本文を子細に読んで仕分けると、2つにしかわけられないのです。
そのことを、近年くりかえし論文の形で公表してきました。私は、〈甲類〉〈乙類〉の2つに分けています。これまでの〈河内本群〉とでもいうものが、おおよそ〈甲類〉にあたります。
このことを、この豊島科研でも強調してきたつもりです。また、豊島科研のスタート時点でも、本文の分類は、これまでのものをリセットして、白紙の状態で臨む、となっていました。しかし、終始、池田亀鑑の3系統論なるものがまかり通り、最後の先週の研究発表でも、それが基準となっての研究発表が目立ちました。
私としては、ウーンと唸らざるをえませんでした。
本文の形態的な分類と、本文の内容を読み取っての文学的な分別の違いについて、この4年間で私にはまったくこの研究会に足跡を残せませんでした。力及ばず、再起を期すしかありません。
いまだに、池田亀鑑の3系統の分類は亡霊のように強かに生き残っています。
さて、どのようにして撲滅すればいいのでしょうか。
私が提唱する、『源氏物語』の本文は内容から見たら2つにしか分かれない、という私見は、まだまだ支持を得るには時間がかかりそうです。間違っていない証拠に、何年にもなるのに、いまだに1つの反論さえ出されていません。
私見が無視されているのではないようです。みなさんがおっしゃることには、『源氏物語』の本文資料が手元にない、という一語につきるようです。『源氏物語大成』はすでに資料集としては使えないことは、すでに多くの方が気づかれるようになりました。そのためにも、『源氏物語別本集成』全一五巻(伊井春樹・伊藤鉄也・小林茂美編、平成元〜一四年、おうふう)と『源氏物語別本集成 続』全七巻(伊井春樹・伊藤鉄也・小林茂美編、平成一七〜二二、おうふう)があります。しかし、これは使いにくいし、使い方がわからないとも。
こうなると、さらに根気強く「『源氏物語』の写本は書かれた内容から見ると2つにしか分別できない」ということを、しつこく言い続けるしかありません。
『源氏物語』の本文に関する〈2分別私案〉は、今後とも粘り強く主張していきたいと思います。
そんなことを教えてもらった、この4年間の研究会でした。
まだ、私にはやるべき仕事があるようです。
それはともかく、豊島科研にかかわられたみなさま、まだ仕事は残っています。
その残務はそれとして、とにかく4年間お疲れさまでした。
非常に有意義な共同討議の場でした。
またいつか、このようなスケールの大きなテーマで、お互いの意見を闘わせましょう。
豊島秀範先生、ありがとうございました。
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