この「教育出版(その1)」では、小学3年生までの教科書をとりあげます。
これまでの経緯と報告は、次の記事をご覧ください。
「教科書に見る平安朝・小学校−国語(1)」(2010年10月31日)
「教科書に見る平安朝・小学校−国語(2)中京出版・大日本図書・二葉図書」(2010年11月 8日)
「教科書に見る平安朝・小学校−国語(3)学校図書」(2010年11月 9日)
さて、ここでも、小学校の教科書に、平安朝らしさを伝えるものがどれくらいあるか、ということを見ていきます。
その手がかりとして、小学校の教科書らしく、多用されている挿絵などに注目しました。貴族男女の衣服や、乗り物としての牛車に着目しています。中世の説話や近世などの話に、お姫様が出てきます。しかし、それは適宜ケースバイケースで、私なりに判断しました。
なお、参考までに、インドに関する教材も、チェックしたので備考として記しています。
【教育出版】(134冊)
昭和29年度用
2年上 一寸法師
2年下 (表紙に浦島太郎とかぐや姫の絵)
3年上 笛の名人(男の衣装)、ぞうの話(インド)、つり針のゆくえ(古事記)
※この年度の教科書は、藤村作が編者です。次期の編集には、その弟子で一緒に紫式部学会を創設した池田亀鑑が、作家の坪田譲治と2人で監修者になっています。師弟による教科書編集の引き継ぎがあったといえましょう。
3年生上にインドの「ぞうの話」があります。
昭和33年度用
1年中 浦島太郎
3年上 大山へ(鳥取)、山にのぼろう(正善達三)、ぞうの親子(インド)
※この年度は、池田亀鑑と坪田譲治が監修者です。池田亀鑑は、昭和31年12月に亡くなっていますので、刊行されたときにはすでにいません。その配慮か、池田亀鑑の肩書きは「文学博士」であり、「東京大学教授」は付いていません。これは、昭和29年度の編集者である藤村作の表記を踏襲しただけかもしれませんが。
編集者の中に、鳥取市遷喬小学校長・稲村謙一(平成17年没)がいます。これは、池田亀鑑が鳥取出身からくる縁での選任だと思われます。まだ調べていませんが、教え子ということが考えられます。
3年生の教材「大山へ」は大山へ遠足に行った話です。また、「山にのぼろう」も、山から汽車や海や船を見下ろす話です。共に、鳥取県と特定はしていません。しかし、池田亀鑑は東京に出るまでは鳥取県の大山の麓で育ちました。後年、『花を折る』(中央公論社、昭和34年)所収の随想を見ると、この大山をしばしば旧懐の情をもって語っています。ここは、大山を思い描いての文章になっていると言っていいでしょう。
インドの「ぞうの話」が、別のものとなって採択されています。
昭和36年度用
1年中 一寸法師・浦島太郎(巻頭)
2年下(欠本)
3年上 大山へ(鳥取)、山にのぼろう(正善達三)
※この年度は、坪田譲治1人が監修者として明記され、池田亀鑑の名はありません。
3年生の教材「大山へ」と「山にのぼろう」は、文章に手が入ってわかりやすくなり、絵も変更されています。
インドの「ぞうの話」は削除されました。
昭和40年度用
1年上 浦島太郎
2年上 わらしべ長者(挿絵が平安朝色)
※監修者は、坪田譲治・亀井勝一郎・池田弥三郎となります。池田弥三郎は折口信夫との関係が深いので、池田亀鑑の後任ではありません。
3年生の教材では、「大山へ」が削除され、「山にのぼろう」の絵が変わりながらも残っています。池田亀鑑の影響を受けない編集になったからではないか、と思っています。
昭和43年度用
1年上 浦島太郎(絵が変わる)
2年上 わらしべ長者
※稲村は元鳥取市遷喬小学校長とあるので、定年退職後もそのまま編集に携わっていたようです。
3年生の教材では、「山にのぼろう」が削除されています。これで、私が池田亀鑑との影響がある教材と見た鳥取に関連するものはなくなりました。
昭和46年度用
1年上 一寸法師
2年上 わらしべ長者
3年上 なかよし名人
※3年上の「なかよし名人」は、昭和29年度用において「わざくらべ」として採用されていた文章を長文に書き換えたものです。
昭和49年度用
1年上 浦島太郎
2年上 わらしべ長者
3年上 なかよし名人
※3年上の「なかよし名人」は、昭和46年版とまったく同一の印刷です。
昭和52年度用
1年上 浦島太郎
2年下 わらしべ長者
※稲村は児童詩研究家として編集者に加わっています。
昭和55年度用
※特にコメントすべきことはありません。
昭和61年度用
※この年度より稲村が編集者からいなくなっています。長期にわたり、教育出版の教科書の編集に携わっていたことがわかります。
平成4年度用
1年(欠本)
2年上(欠本)
昭和50年以降になると、教育出版の小学1年生から3年生までの教材においては、古典の香りを確実になくしていくことが、明らかに認められます。
前回の「教科書に見る平安朝・小学校−国語(3)学校図書」の最後に指摘したことが、ここでも見られます。
その傾向が4年生から6年生までにもあるのかどうかは、次回「教育出版(その2)」にまとめます。
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