2010年06月24日

『源氏物語別本集成』中断の弁

 平成元年から配本を開始した『源氏物語別本集成(全15巻)』は、平成14年に第一期が完結しました。この間に、総勢80人が376帖の写本を読みました。各帖を3人が読んで確認したので、約10億字を読んだことになります。

 引き続き、平成17年から第二期にあたる『源氏物語別本集成 続(全15巻)』をスタートさせ、昨年7月に第6巻(22巻「玉鬘」〜27巻「篝火」)を刊行しました。
 この第二期では、第一期の3倍の分量の写本を対象としているため、約30億字を読む計画です。
 
 
 
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 そして明日、平成22年6月25日に『源氏物語別本集成 続 第7巻』(28巻「野分」〜32巻「梅枝」)が刊行されます。
 
 
 
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 ただし、この巻をもって、ひとまず『源氏物語別本集成 続』は中断とさせていただきます。

 予定していた全15巻の道半ばではありますが、諸般の事情で継続を断念することにしました。出版社の方からは、このまま刊行を続けたいとの強い意向を伺っています。しかし、あくまでも私の問題なのですが、版下作成までの工程を責任をもって管理できない状況にあり、この中断は致し方のない判断と言わざるをえません。

 たくさんの方々の理解と協力を得て、ここまで続けて来られたのは、本当に幸いでした。
 お世話になったみなさまに、感謝と共にお礼を申し上げます。

 今後は、ネット公開を視野に入れた、新たな取り組みをしていくつもりです。
 ただし、そのためには、これまでの翻刻本文データの整合性を確認し、手元の『源氏物語』に関する本文データベースの大手術をする必要があります。

 また、『源氏物語別本集成 続』の第8巻以降の巻である、第33巻「藤裏葉」から第54巻「夢浮橋」までの、残された写本の翻字作業もあります。試算では、およそ15億字の確認が今後とも必要になると思われます。

 しばらくは、次のための準備期間ということで、お許しをいただきたいと思います。
 その報告は、このブログの場を借りて、折々に記していくもつりです。

 『源氏物語』の本文のデータベース化は、昭和55年の暮れからでした。あれから、もう29年が経っています。
 当初の状況は、拙著『新・文学資料整理術パソコン奮戦記』(昭和61年、桜楓社)に記した通りです。
 
 
 
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 この本を、毎日新聞の姫野聡さんが新聞に取り上げてくださってから、『源氏物語』のデータベース化は予想外に進捗し、たくさんの方との出会いが生まれました。
 また、伊井春樹先生を中心に発足した「日本文学データベース研究会」は、日本文学と情報処理の接点において、多くの新提言をすることとなりました。

 華やかに見えた『源氏物語』のデータベース化も、実は根気だけが勝負の、地味な作業の積み重ねでした。
 写本を読み、翻字して、パソコンに入力します。集まった諸写本の翻刻データをパソコンで処理して、版下作成ソフトで整形します。そして、校正を繰り返して出来上がった版下を、出版社を通じて印刷所に送ります。すると、印刷・製本された『源氏物語別本集成』の完成です。
 こうした工程を、20年以上も続けて来たことになります。

 特に、第一期と第二期では、翻刻本文に対する付加情報が異なります。第二期が圧倒的に詳細なので、第一期の翻刻データも第二期に合わせて、早い段階で付加情報を整備する必要があります。

 そのためにも、まずは写本を読んでいただく人材の確保が大切です。
 実際には、すでに翻刻してあるデータを校正する方式で、新しい写本のデータを作成しています。
 実作業の一例をあげます。第34巻「若菜上」の場合です。
 
 
 
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 これは、すでに完成している大島本の翻刻本文を紙に印刷し、そこに正徹本の本文を、赤字で校正する形で記入しているところです。
 大島本の翻刻データに、この赤字で修正された箇所を訂正入力することで、正徹本の翻刻データができあがります。

 翻刻データを作成するということは、この校正のような作業をしていただくことです。決して、写本に書かれている文字を、サラサラと白い紙に書いていくのではないのです。ご安心ください。
 ご覧の通り、「みゆき」を「御幸」に、「としころ」を「年比」にと、仮名を漢字にするケースがほとんどです。

 そして、データ処理のお手伝いをしていただく方も、重要な役割を担うことになります。この赤字が入った紙を見ながら、パソコンを使って文字の修正などをするのです。

 とにかく、一大プロジェクトチームの再編成です。
 自薦・他薦を問わず、手伝ってやろうというボランティア精神の旺盛な方からの連絡を、じっと待つことにしています。

 嬉しい連絡を、新たな出会いを、楽しみにしています。
posted by genjiito at 20:37| Comment(0) | ◎源氏物語
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