2010年03月26日

藤田宜永通読(8)「還暦探偵」

 還暦で定年退職した男2人が、同級生だった女から夫の浮気調査をもちかけられ、それを引き受けます。
 しかし、調査対象者である夫と、還暦探偵の男同士がしだいに打ち解けて盛り上がり、とうとう夫からの人探しの依頼を受けることになるのです。

 暇つぶしの素人探偵の話です。軽めのお話です。藤田の最近の作品は、気楽に流し読みする程度の作品が多くなりました。かつての、手に汗握るハードボイルドが恋しくなります。

 50年前の映画の話がたくさん出て来ます。作者と同世代の私には、懐しい話題です。読者サービスの一種のつもりなのでしょう。しかし、作品の中での効果の程は、いささか疑問です。小説のための小道具に見えます。

 いつもながら、物語の閉じ方が不自然です。短編の難しさなのでしょう。単行本に収録される時には、このあたりに手が入ることでしょう。

 今の藤田らしい、と言えばそうなのです。しかし、表現力のある作家なので、さらにいいものを求めてしまいます。一時の純愛小説めいた、フニャフニャした作品の時期は終わったようです。還暦を境に、軽妙な語り口に変化していこうとしているのでしょうか。しかし、私は躍動感のある藤田宜永らしい初期の物語を望んでいます。【1】


掲載誌『小説新潮』(2010年4月、新潮社)
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | □藤田通読
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