2010年03月23日

吉行淳之介濫読(2)「星の降る夜の物語」「遁走」

■「星の降る夜の物語」
 巧妙な語り口です。
 4章仕立ての短編なので、演劇にしたらいいと思いました。檜山太郎の一人語りで。
 そのためには、もっとドラマチックな展開が必要です。
 後年の吉行淳之介の作品を知っているせいか、エンターテイメント性を発揮する前の、まじめに文学を書くために原稿用紙に向かう、文学青年としての吉行が浮かんできます。
 婚約を前にして、ルリ子とその両親に語る檜山の話は、私には緊張した語りにしか伝わって来ませんでした。面白味がほしいところです。
 その意味では、最後の「かの輝ける北極星はコンペイ糖でありました。」というフレーズが、記憶に残りました。【2】

 なお、作者は本作を収録する『吉行淳之介初期作品集』(1967年、冬樹社)の「あとがき」で、この作品について次のように言っています。

この題名は、当時、星を仰いで溜息をもらし菫を見て涙を流すいわゆる星菫派の戦後版が流行しはじめたので、その風潮にたいしてイロニックな気持も含めてのものである。もしも、抒情的な風景の中でたいへん抒情的なお話の始まることを期待した読者があったとしたら、深くおわびしなくてならぬ。(227頁)



■「遁走」
 気が狂った三之介の言動がおもしろい作品です。
 彼を取り巻く人たちの反応も、興味深いものがあります。
 人間をよく観察していると思います。ただし、読後に心に残るものがありませんでした。【1】

 なお、本作は、前回「吉行淳之介濫読(1)」で取り上げた「雪」よりも半年早く書かれた作品です。

掲載誌︰「葦」(第2号、発刊年未詳、昭和20年6月稿)
『吉行淳之介初期作品集』(1967年、冬樹社)収録
posted by genjiito at 23:56| Comment(0) | □吉行濫読
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