2010年03月13日

小さな町を揺るがした池田亀鑑の1日

 鳥取県の日南町総合文化センターの多目的ホールで開催された講演会は、大盛会のうちに終わりました。
 閉会後の関係者の方々との交流を兼ねた懇親会でも、大成功だったなー、という言葉が乱れ飛んでいました。
 
 
 
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 日南町は、人口5000人ほどの町です。町の面積は、鳥取県の一割だとのことでした。しかし、住民の数は年々激減の一途です。果たして何人来て下さるのか、ドキドキの開催でした。
 
 
 
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 そんな町で、今日会場に集まった方は、なんと120人をはるかに越えて、改めて集計すれば150人に届こうかという大入りだったのです。とにかく用意された会場はギッシリと埋まりました。開始直後から、補助椅子を何脚も出しておられました。それだけ、人が集まったのです。
 
 
 
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 私が、エジプトのカイロで『源氏物語』に関するイベントを開催したとき、主催者側の国際交流基金は30人も集まれば、という読みでした。しかし、その予想は大きく外れ、なんと100人以上が会場に集まったために、急遽会場を広くして椅子を運びと、大変なことになりました。それだけ、『源氏物語』は人の気を惹きます。気になるのです。そして、何よりも日本を知りたいという気持ちに誘います。

 そうは言っても、今回は『源氏物語』と言うよりも、池田亀鑑という、実はよくわからない人間を前面に出しています。本当に、何人集まってもらえるのか、数の読めないイベントでした。
 今は、安堵しています。しかし、関係者は気が気ではなかったことでしょう。何しろ、こんな学術的なイベントは、町始まって以来なのですから。これは、全国的にも、自治体レベルでこんな催しは例がないはずです。

 今回、たくさんの方々が集まられた理由は、いくつか考えられます。

 日南町は、井上靖と松本清張にゆかりの地として宣伝なさっていました。しかし、池田亀鑑がいることを、軽く思っておられたようです。それが、昨年の11月3日に、顕彰碑を建てられたことにより、少しずつ見直しの機運にあったのでしょう。
 そこへ、久代安敏町議と気のあった私が今回のようなイベントを提案したことが、町民のみなさんが気にはなりながらも知りたいと思っておられたことと、その想いが一致したのではないでしょうか。それ以上に、「池田亀鑑文学碑を守る会」の方々の思いも、町民の方々の潜在意識に訴えかけたのではないでしょうか。
 それよりも何よりも、池田亀鑑は22歳まで、鳥取県を出なかったのです。よそ者ではないのです。そんな池田亀鑑を、生まれ故郷の日南町が再評価せずに、どこがするのでしょうか。
 今回のイベントを終え、そうした思いは、町民の方々をはじめとして、開催に尽力された方々にも実感として感じられたようです。これからが、大いに楽しみな町です。

 さて、本会は「池田亀鑑文学碑を守る会」の会長の開会のことばのあと、町長の挨拶から始まりました。
 
 
 

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 一番バッターは小川陽子さんです。
 
 
 
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 タイトルは「池田亀鑑と後継者たち」ということで、北見志保子、大江賢次、小松茂美、そして恩師の師匠である稲賀敬二を例にして、会場の皆さんの涙を誘うような感動的な話が展開されました。
 
 
 
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 人間の生きざまというものに迫る、熱のこもった内容でした。
 後で聞くと、涙が出そうで周りを見回した、という方が何人もおられました。

 続く原豊二さんは、「池田亀鑑の資料収集」と題して、『源氏物語』の研究者としての実像に迫る話でした。
 
 
 
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 折しも、今日の日本海新聞に原さんのことが記事として取り上げられていたので、参加者のみなさんも原さんの立場をよく理解されたようです。この日の新聞に載るという、タイムリーな出来事が、この催しを後押しした形でした。
 
 
 
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 会場の皆さんは、池田亀鑑がやり遂げた仕事の意味について、改めて認識を改められたかと思います。

 最後に私が、「若き日の池田亀鑑」題して、若い頃の足跡をもとにしてその実像についてお話しました。
 
 
 
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 師範卒で検定上がりということで、東大の中で晩年まで苦労の連続だった原因などを、年譜をたどりながら説明しました。経歴と派閥の中で苦悩した池田亀鑑という人間を、何とか理解してもらおうとの思いから、町民の方々に語りかけました。
 
 
 

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恵まれた環境が決して幸せに結びつかないように、劣悪な環境でも、それを克服しようとする気持ちが尊いことを力説したつもりです。

 みなさん、熱心に聞いて下さいました。
 『源氏物語』に関する講演会というと、女性が圧倒的に多いのです。しかし、今日は8割以上が男性でした。これも、珍しいことです。
 『源氏物語』の内容の話はまったくなかったので、次はそんな講演にしてほしい、という要望が寄せられました。
 今回の参会者の興味の中心は、あくまでも池田亀鑑という男は一体何者なのだ、ということにあったと思われます。『源氏物語』そのものについて知りたい、ということではなかったのです。地元出身の池田亀鑑という男を理解していく中で、それではその男が命をかけた『源氏物語』とはなんなのだろう、という流れで、つぎの集まりを考えて行きたいと思います。

 本当に稀有な内容の講演会でした。
 そして、ほとんどの方が、池田亀鑑の知られざる一面を聞き、改めて1人の男に対する認識を深められたようです。

 会場からの質問は、『源氏物語』の本文に関するものから、池田亀鑑の生き様に関するものまで、みなさんが熱心に聞いて下さっていたことがわかるものでした。『源氏物語』の本文に関する質問では、「別本」というものをよく理解してのものだったので、私も真剣にお答えしました。ありがたいことです。
 
 
 
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 講演会後の懇談会で、私は2つの提案をしました。

(1)図書館の中に、池田亀鑑のコーナーを作ってほしいこと。
  現在、井上靖と松本清張のコーナーが、L字型に作られています。
  そこへ、池田亀鑑のコーナーも作ってコの字型にしてほしいことを、お願いしました。

(2)「池田亀鑑賞」を制定し、40歳以下の若手中堅の研究者から、池田亀鑑に関する伝記・評論などと、池田亀鑑と『源氏物語』をテーマにした研究論文を募り、優秀な論文には町から表彰する、というものです。
 若手研究者は、個人研究の成果を公表する場を探し求めています。
 20万円の懸賞金をつけて、1人でも多くの若手研究者を支援する場所に、日南町は名乗りをあげるべき時が、今やっときたのです。全国に呼びかければ、きっと大きな反響があるはずです。
 日本の古典文学から遠ざかりつつある若者たちを、これを機会に刺激してほしいと願っていることを提言しました。検討する、とのことだったので、いい方向で取り組まれることを期待したいと思います。

 今回のイベントは、大成功だったことはなみさん思っておられます。
 実際に、たくさんの方々が、熱心に聞いておられたのですから。

 後片付けの愉しかったこと。
 
 
 
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 私は、話の中で、町内にある「池田亀鑑誕生地」という石碑のあることを紹介しました。
 講演会終了後、そこへ行ったことがない、とおっしゃる方とその石碑の場所へ数人で行ったところ、先ほど話を聞いたので見てみようと思って来ました、という女性と出くわしました。
 
 
 
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 昨日までの雪が溶けて、いい顔をした碑が建っていました。
 「ありがとう」という声が聞こえそうでした。

 この池田亀鑑のことは、日南町内での話なのです。知らなかったら、それって何、との思いから見てみたくなるのは当たり前です。そうした思いには、町としても応えるべきです。そして、町外の方々にも、自信をもって誇るべきです。とくかく、池田亀鑑は日南町で産声を上げたのですから。

 こうした取り組みは、3回までは続きます。しかし、4回目が開催できるか、というのが問題です。
 ぜひとも、10回までは続けてほしいものです。規模は小さくてもいいのです。続けることが大事だと思います。
 今日まで準備に当たられた「池田亀鑑文学碑を守る会」のみなさまを始め、たくさんの方々に、改めてお礼を申し上げます。
 また来年おあいしましょう。

 久代さん。知り合って3ヶ月しか経たないのに、こんなに愉しいイベントが、それも成功裏に終わったことに感謝し、感激しています。出会いのすばらしさを噛みしめています。お疲れさまでした。ありがとうございました。
 いろいろな課題を預けたままですが、みなさんと解決していけたら、と思います。
 ますますのご活躍を祈っています。
posted by genjiito at 23:55| Comment(2) | ◎源氏物語
この記事へのコメント
伊藤鉃也さま。
このブログを介してのであいから僅かばかりの時間で、池田亀鑑と『源氏物語』の講演会が成功したことに心よりお礼申し上げます。
日南町はこれまで文豪ゆかりの地として井上靖や松本清張についてはさまざまな取り組みをしてきましたが、池田亀鑑についてはほとんど篤志家によるものでした。
講演でも提案されていたように、日南町図書館に池田亀鑑コーナーを設けることは基より、「池田亀鑑文学賞」というのも実現の運びになればと考えています。
これからも永いお付き合いとご教示よろしくお願いします。
Posted by 久代安敏 at 2010年03月15日 11:16
今回の取り組みを知り、行けなかったので資料が欲しい、という方々からの連絡を早速いただいています。
 当日のレジメを、公開しようと思っています。
 また、今回の講演会の報告書を、大至急作成したいと思います。
 詳細は、後でご相談いたします。
 1人でも多くの方と、今回の成果を共有できればいいですね。
 ご一緒に、さらに前に向かって進んでいきましょう。
 こちらこそ、末永くお付き合いのほどを。
Posted by genjiito at 2010年03月15日 15:48
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