少し早く着いたので、すぐ前の議事堂の前を散策しました。
ギリシャ風の建物です。ただし、私は真ん中の丸い塔のような部分が好きになれません。ここには、四角い構造物を置いてほしいものです。
お昼を議会図書館の中で食べ、閲覧最終の午後4時45分に調査対象である54冊の『源氏物語』をカウンターに返却する、という8時間15分ビッチリの古典籍調査の3日間です。
調査に没頭する姿を見て、図書館のNさんが息抜きをさせてくださいました。館内の見物です。ここは、たくさんの方がツアーの一環として訪れるところでもあります。
図書館の中は、非常に豪華な造りでした。
調査にあたっての当初の議会図書館との打ち合わせでは、写本の写真撮影は研究の上で必要な箇所数枚くらいなら、ということでした。ただし、詳細はその時に相談して判断する、ということになっていました。しかし、今回の調査の内容とその意義を理解していただき、54巻全巻の撮影をしても構わない、ということになりました。ありがたいことです。
早速調査方針と内容を検討し直し、写本に書かれている本文の翻刻を中心にした作業から、原本を写真撮影することにウエイトを置くことに切り替えました。
いい写真を撮るためには、どうしても撮影用の三脚が必要です。図書館の近くにカメラ屋さんがないかを尋ねると、少し離れたところの店に三脚も置いてあることがわかりました。
すぐにタクシーを飛ばして市街へ行き、カメラ屋さんで入手し、待たせていたタクシーでとんぼ返りをしました。
ここで不愉快なことがありました。
タクシーを降りるときに、メーターの通りに13ドルを渡しました。しかし、運転手さんは17ドルだと言うのです。ここがインドならば、1ルピー(3円)でも不当な請求には断固戦うのですが、いかんせん、今は1枚でも多くの写真撮影がしたいので、時間が貴重なのです。口論をするのも無駄なので、20ドル紙幣を渡しました。すると、おつりを2ドルしか渡してくれません。チップのつもりなのでしょう。腹が立ちました。しかし、とにかく写真撮影が最優先なので、顔も見ずにタクシーを降りました。まったく、人の弱みにつけこんで……。
撮影は快調に進みました。ただし、三脚の頭に取り付けるアタッチメントをなくしてしまい、3日目の最終日は持参していたマジックテープのベルトでカメラを三脚に固定して使いました。
3日間で撮影した写真は、今はまだ整理中ですが、5千枚を越しています。
写本は、鳥の子紙に書写されています。それも、しっかりとした紙で、捲るときにパリパリと音をたてる程です。本の背中を守るためにも見開きでの撮影が難しいと判断し、V字にして片面の半丁ずつを撮影しました。したがって、シャッターを切る回数も2倍となりました。つまり、1万回以上はシャッターを押したことになります。
今回の調査は、6人で実施しました。手分けして流れ作業のように、チームワークよく進めることができました。
古写本の撮影に関しては、最後に議会図書館側から提示された書類にサインをして、無事に終了です。
的確な判断の下、研究者である我々に対する最善の処置を講じてくださった米国議会図書館のアジア部のみなさま、中原さん、伊東さん、PIPHERさん、そしてカタログ部のROGERSONさんには、篤くお礼を申し上げます。また、わざわざご挨拶においでになったアジア部のYOUNG部長の有り難いご理解にも感謝いたします。
今回の成果は、今年中には報告書として公開できるはずです。
図書館の司書の方々からは、1人でも多くの方がこちら米国に来て、この本を活用してほしい、とおっしゃっていました。
この本は、書写された本文はもちろんのこと、写本そのものの形状や現状からわかる、書写された背景にある文化的な事象も、大変おもしろいものを内包しています。その意味では、大変貴重な『源氏物語』の古写本だといえるでしょう。書かれた『源氏物語』を通して、写された時代と環境、そしてその背景をなす文化が垣間見える写本です。
一人でも多くの方に、この本を手にして、その中身と背景にあるものを調査し、研究してほしいと願っています。
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