2009年11月27日

井上靖卒読(102)「漂流」「塔二と弥三」「明妃曲」

■「漂流」
 人間が漂う中で見せる心の動きが、丁寧に描かれています。
 ただし、話は中途半端に終わります。依った資料がそうだったからでしょう。
 漂流中の話がいいので、その後が知りたくなりました。
 婚約者のぬいが、同輩で共に岡部を切った宮部の妻になっていることは、非常に惹き付けられます。しかし、井上靖はそれ以上には筆を進めません。物語展開を打ち切って筆を擱いているのは、何か急いでいるように思えます。
 井上靖は、自分の想像力を使っていません。その後はわからない、という終わり方は、惜しいと思いました。【2】



初出誌︰文学界
初出号数︰1953年11月号
 
 
角川文庫︰異域の人
角川文庫︰天目山の雲
井上靖小説全集 15︰天平の甍・敦煌
井上靖全集 4︰短篇4




■「塔二と弥三」


 運命の悪戯で、蒙古に連れ去られた2人の漁師。時のフビライに謁しても何も感じないのです。
 2人の男は帰国します。しかし、記録には、その後は不明とあるようです。
 歴史の一部に名を残す人間を掬い上げ、その背景を物語化しています。
 ただし、情報不足のために打ち切っています。井上靖の仕事の中の一片として作品化された物語です。【2】



初出誌︰オール読物
初出号数︰1963年11月号



文春文庫︰崑崙の玉
角川文庫︰天目山の雲
井上靖小説全集 16︰蒼き狼・風濤
井上靖全集 6︰短篇6



■「明妃曲」

 最初は、自分の興味の赴くままに語る随想です。それが、徐々に一人語りとなり、やがて王昭君の物語となります。
 よく考えられた構成です。
 王昭君の出生には、月光が関わっていることに、興味を持ちました。


 新資料という創生により、美女伝説に彩りを与えようとしています。井上靖のロマンが、自由に開花しています。
 人の生き様をみごとに描いた作品になっています。【4】





初出誌︰オール読物
初出号数︰1963年2月号


文春文庫︰崑崙の玉
角川文庫︰天目山の雲
講談社文芸文庫︰異域の人・幽鬼
井上靖小説全集 18︰朱い門・ローマの宿
井上靖全集 6︰短篇6





〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 00:10| Comment(0) | TrackBack(0) | □井上卒読
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