2009年09月29日

井上靖卒読(91)「鬼の話」「道」

■「鬼の話」

 作者は、不眠の苦しさの中で、物故者に角がある人ない人がいることに気づきます。
 ユーモラスでいて、人間というものを考えさせる話です。
 生後7日で亡くなった我が娘にも、角を額に並べてみると、愛くるしいと言います。この娘のことは、本作品の中に何回かでてきます。よほど、井上靖の心の中に残っているのでしょう。
 死者との語らいは、井上の得意とする手法です。『星と祭』に極まるものですが。
 毎夜の不眠に苦しむ人が身近にいるので、改めて輾転反側の中で何を思うのかを考えてみたりしました。井上靖は、眠れぬ夜に、鬼というものを見つけたのです。
 「鬼」という漢字の話が興味深く語られます。
 鬼族の漢字に星の名が多いことから、星が死者の霊と関係するという結論に惹かれました。『星と祭』に直結する考え方です。
 星は天上の鬼ではないのか、という思いにまで展開します。無数の星に、無数の死者の霊が宿っている、というのは頷けます。「人間は死ぬと天にのぼって星になるか、地にひそんで鬼になるか」というのもわかります。
 その後は、鯖内と華枝の鼻話となります。これが、心に響くものとなっています。【5】
 
 
初出誌︰新潮
初出号数︰1970年2月号


新潮文庫︰道・ローマの宿
井上靖小説全集31︰四角な船
井上靖全集7︰短篇7・戯曲・童話
 
 
 
■「道」

 生き物は、それぞれに道を持っている、といいます。観念的なものではなくて、実際の道です。
 獣道、犬道、子供道などなど。自分だけの通り道です。
 それを聞いた来客が、銀座は馴染み道だと言います。うまい表現です。
 とすると、賀茂川をウォーキングしている私は、健康保持のための馴染み道を歩いていることになります。
 これは本能的に選んだ道ではないので、単なる散歩道の一種ということなのでしょうか。【3】




初出誌︰新潮
初出号数︰1971年6月号

新潮文庫︰道・ローマの宿
井上靖小説全集32︰星と祭
井上靖全集7︰短篇7・戯曲・童話



〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 05:34| Comment(0) | TrackBack(0) | □井上卒読
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