2009年05月28日

井上靖卒読(72)『詩集 遠征路』

 『詩集 遠征路』は、井上靖の5番目の詩集です。
 昭和47年から51年を中心とした作品を集めたものです。

 昭和46年5月から1年間、朝日新聞に『星と祭』を連載します。
 その影響が揺曳しているのか、この詩集には月がよく出てきます。

 「仙境」では、〈無人の理想郷に月を配してみると、おそろしいほど荒涼としている。〉〈深夜こっそりと、月光を浴びて〉と、広大な世界に冷たい月のイメージが感じられます。
 〈月〉と〈荒涼〉という連想は、「友」という詩にも見られます。

 「トルコの砂漠」には〈青い月〉が出ます。
 「月」では、〈一人の旅行者〉として月を見ています。

 「月に立つ人」では、〈月の世界はしんと静まり返っている。〉〈空を仰いで月を見守っている。私もその一人だ。人類の一人残らずが、初めて孤独になって、月をみている。〉と、静なる月と孤独な人間が点描されています。

 異国の地に思いを馳せて綴るときに、〈月〉が作者の頭上にあるようです。

 なお、この『詩集 遠征路』は、ドイツ語に翻訳されています。



昭和51年10月25日
集英社
41編収録

新潮文庫︰井上靖全詩集
井上靖全集1︰詩篇
posted by genjiito at 22:41| Comment(0) | TrackBack(0) | □井上卒読
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