2009年01月27日

井上靖卒読(57)『オリーブ地帯』

 父が大学教授でお嬢さん育ちの藤川京子と、教授が大の苦手な新聞記者椎葉了介との、突然の出会いから始まります。心中未遂となる京子は、非常にアクティブな女性です。

 その椎葉が結婚しようとしているのが、幼馴染みの椿泰子です。ただし、泰子は別の男である佐倉伸三に惹かれています。
 暗い影をもつ佐倉を交えることによって、男2人と女2人の恋愛感情の交錯がおもしろく捻れる作品です。

 恋愛感情の行き違いから、さまざまなドラマが展開します。
 特に、泰子の行動が、チョッとミステリー仕立てになっています。美女の背景に何があるのだろうか、ということを思わせながら、話は進行します。

 やがては、泰子という女性の影から必死に逃げようとする椎葉。京子と椎葉の関係はどうなるのか。
 どうすることもできない状況の中で、とにかく生きていくことが語られます。
 泰子が佐倉を、椎葉が泰子を、京子が椎葉を想っています。
 彼らによる、追いつ追われつの恋愛物語となっています。

 車窓からの琵琶湖の描写が、井上らしい点描だと思います。
 また、舞台は大阪なのに、どうしても東京の銀座界隈のように錯覚させる設定です。

 この小説を簡単にまとめると、一人の男が自分の心を整理する物語だ、と言えます。
 終わり方は、井上らしく余韻があります。【4】





初出誌︰婦人生活
連載期間︰1954年1月号〜12月号
収録状況

文春文庫︰オリーブ地帯




〔参照書誌データ〕
 井上靖作品館
 http://www2.plala.or.jp/baribarikaniza/inoue/
posted by genjiito at 23:57| Comment(0) | TrackBack(0) | □井上卒読
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