2009年01月15日

『源氏物語』の本文は2種類ある

 昨年の秋にハーバード大学でおこなった研究発表では、『源氏物語』の本文の分別試案として〈甲類〉と〈乙類〉というものを提案しました。


本文分別試案の研究発表


 また、その試案については、同じく昨秋、「源氏物語本文の伝流と受容に関する試論―「須磨」における〈甲類〉と〈乙類〉の本文異同―」(『源氏物語の新研究 −本文と表現を考える』平成20年11月、横井孝・久下裕利編、新典社)でも公表しました。これは、「海を渡った古写本『源氏物語』の本文 ―ハーバード大学蔵「須磨」の場合―」(伊井春樹編『日本文学研究ジャーナル 第2号』、平成20年3月)と題して発表したものの続編であり、本文分別に関して新たな分類名を付けた最初のものとなります。

 この〈甲類〉と〈乙類〉という分別試案については、その後、何人かの方から質問を受けました。この2分別については、今後とも巻々の検討を重ねる中で確認していくしかありません。その間は、右へ左へと揺れることでしょう。その評価の揺れる巻が、当面の研究対象の一つとなることは明らかです。

 『源氏物語』を読むことについては、今はすべての人が大島本だけを読んでいるのが実情です。しかし、今後の研究者は、それぞれに自分がよしとする本文を読むのではないでしょうか。
 例えば、これまで通りに大島本を、いや陽明本を、あるいはハーバード大学本を、ということも想定されます。ただし、ハーバード大学本は「須磨」と「蜻蛉」の2冊しかないので、『源氏物語』の全体は読めません。
 そのためにも、大島本に代わる共通の校訂本文としてのテキストが、いずれは必要になることでしょう。
 これについては、私は天理図書館にある池田本を、第2の流布本にしたらいいとの考えから、校訂本文の公開の準備を始めています。


3本対照校訂本文試案


 陽明本の校訂本文は、『源氏物語別本集成 続』全15巻(伊井春樹・伊藤鉄也・小林茂美編、平成17〜刊行中、おうふう)で公開しています。
 こうした本文の提供は、今後の大きな課題でもあります。
posted by genjiito at 22:58| Comment(0) | TrackBack(0) | ◎源氏物語
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