第2回目のタイトルは、「人なくてつれ/\なれば −一本を見つめるということ−」でした。
これは、「若紫」巻の有名な本文異同を対象にしたものです。
つまり、大島本と伏見天皇本だけが「人なくてつれ/\なれば……」と書かれているところを、他の本はすべて「日もいと長く……」としていることを取り上げてのお話です。
この本文の違いについて、一本を見つめるという立場から、あくまでも大島本で読み通そう、ということを強調なさいました。それは、岩波の『新大系 源氏物語』で示された、校訂本文のありように通じるものです。いろいろな本文から、いいと思われるものを選んで読むのではなくて、一本を読み通す、ということです。
そして話は、伊井春樹先生がなさった、先日の中古文学会での講演に及びました。
伊井先生が紹介なさった大沢本について、新聞記事と「夢浮橋」の本文異同を例にして、室伏先生なりの読みを示してくださいました。
伊井先生が講演で例示されたものに、「夢浮橋」の「谷の軒ばより」という箇所があります。
ここを、大沢本は、「たきのきは」としているのです。まったく異なった表現です。
室伏先生は、大島本のまま「谷の軒ばより」で解釈できないか、という視点から、句読点の切り方で読めるとされます。そして、「谷の、軒ばより」として、「の」を中止法となさるのです。
そして、「私がやった『新大系』では「谷の軒ばより」としたが、これは恥ずかしいことだった。」とおっしゃり、「谷の、軒ばより」としたい、と明言なさいました。
これは、大沢本の異文を受けての提言です。
講演会だったのですが、非常にわかりやすい話でした。
「一本を見つめるということ」の実践例を拝聴することができ、有意義な時間となりました。
次回は、10月28日(火)の3時から、「竹取物語からうつほ物語へ −源氏物語の承けたもの〈その一〉−」と題しての講演です。
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