2008年05月25日

読書雑記(9)〈 定年小説 〉特集を読む

 『小説現代』の6月号に「〈 定年小説 〉特集」が組まれていました。

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 そろそろ自分自身の問題になる、という自覚が日々強くなることもあり、いつもは読まない文芸雑誌を、つい買って読んでしまいました。

 「定年」という一つの課題のもとに、6編の短編小説が収録されています。6人の作家のうち、私がこれまでに読んだことのあるのは、藤田宜永と橋本治の2人だけです。
 それぞれに結構たのしめました。

■秋元康「シリーズ潮時 定年」
 キーワードは「潮時」です。
 最後の、定年を迎えてのスピーチは、あまりに状況に頼り過ぎたものです。話す内容で勝負すべきだったと思います。

■藤田宜永「ブーベの恋人」
 いつもの藤田ワールドでした。ただし、定年というテーマと合わないように感じました。
 話がユラユラと揺れていて、不安定な話になっています。
 タイトルに合わせた仕掛けがなかったのが残念でした。
 平凡すぎたのです。

■高任和夫「シンパシーの復権」
 「シンパシー」がキーワードの話ですが、最後が流れてしまいました。話をきれいに収めようとし過ぎたせいではないでしょうか。

■佐江衆一「駅男」
 小説作法が透けて見えました。いい話が散らばっているので、もったいないことです。作中作の小説は不要だと思います。 

■橋本治「チューリップが咲くまで」
 話の構成がうまいと思います。人間の心理を解説して聴かせてくれます。その説明がわかりやすいのです。橋本治の文章をよんだことは何度もありますが、小説は初めてでした。「定年」というテーマを、うまく表現して作品としていました。

■藤原智美「お分かりにならない方」
 丁寧な描写で語り進められていきます。切れ切れ、飛び飛びの文が、リズミカルに展開していきます。
 仕事からの定年というよりも、人生の定年というか終着点に立っての物語です。
 「楽しいボケ老人を演じる」ひとりの男を通した、スリルに満ちた話です。後半の急展開が気に入りました。
 私は、この作者のことをまったく知りません。ほかにどんな作品を書いているのか、書店で本を探す楽しみが増えました。



posted by genjiito at 19:48| Comment(0) | TrackBack(0) | ■読書雑記
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