先週から始まった、「山口伊太郎遺作展 源氏物語錦絵絵巻」を見るためです。
織物で国宝の源氏絵巻を織ったもの、ということで、百聞は一見にしかずと、早速でかけたのです。
見て驚きました。とにかく、言いようのないほどにすごいものを直に見て来た、というのが実感です。
人間のすることはすごいものだと、大きなエネルギーをもらって来ました。
山口伊太郎さんは、京都西陣を代表する織物作家でした。それが、昨年6月に105歳で亡くなられたのです。
その山口さんが、37年かけて「源氏物語錦織絵巻」を完成させたのです。
実は、最終巻の第4巻は、山口さんの没後も職人さんたちが織り続け、先月やっと織り上がったのでした。田村邦夫さんは、第1巻からずっと織り手を務めて来られたのだそうです。
この第4巻は、幅33センチ、長さ約12メートルもの大作です。
極限まで織物の可能性に挑んだ山口さんの意思が、こうして源氏千年紀の春に結実したのです。
絵巻の詞書も忠実に織ってあるのですから、見ているだけで織物の不思議な世界に引き込まれます。
今回は、第4巻が完成したことによる、全4巻の展覧でした。しかし、すでにこれまでにも、第3巻までは、何度か展示されていたようです。
私は、今回はじめて拝見しました。ただただ目をみはって見つめるだけでした。
緻密な織物に感激して帰って来ました。日本人が伝えて来た技術に脱帽です。その伝統を、このように形として残す職人さんと、それを包み込む芸術家の集団の快挙でしょう。
国宝の源氏絵巻の複製と思っていた私は、とんでもない思い違いをしていました。
今回の展示パネルに、こんな説明文がありました。
「柏木(一)」で、朱雀院が女三宮を前にして苦悩する場面についてです。
伊太郎はある日、月参りに訪れた鷹ヵ峯源光庵のお坊さんに、いろいろとポーズをとってもらって、衣がどのように重なって、下のものがどんなふうに透けて、どこに影ができるか、克明に研究し、図中の院の衣を織り上げました。「鈴虫(一)」で侍女の衣が透けているように浮かして織っていますが、これも白い下着に対して、墨染めの上着は浮かせて二重構造で着せています。
これだけでも、この錦絵が単なる模写ではないことがわかります。
この錦絵は、実際に自分の目で見て、見る角度によって色が変化し、立体的に見えるところを堪能すべき作品だと確信しました。写真や図録もありますが、それは単なる平面的な、その場限りの映像にしかすぎません。
自分の目で見ることの意味を、改めて痛感させられました。
展覧会は、今年の7月6日まで、同志社大学の北隣にある、相国寺の美術館でやっています。
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