2008年04月04日

藤田宜永通読(4)『恋愛事情』

 本書『恋愛事情』(文芸春秋、2006年3月)は、『オール讀物』に、2004年5月から2006年1月までに掲載された6編を収録したものです。
 なかなかよくできた、上質の短編で構成されています。

■「土鍋」
 入れ歯をめぐる場面がおもしろい小説です。
 最後の土鍋への展開が、それまでとはまったく繋がらないだけに、秀逸だと思いました。話のとじめがうまいと、感心しました。【5】

■「封を切る」
 なぜ順子は娘のことで狼狽したのか。
 若い男女の心の動きが、うまく描かれています。
 「抵抗が高いとボルトが上がる」というのは、うまい表現だと思いました。
 本当の想いを伝えられず、彼の仲人役を演じていた順子の描写が絶妙です。
 死が近いからこその告白です。場面設定と人物の位置づけが、よく練られています。昔好きだった女に背を向けて立ち去る男の、格好良さで幕となります。【5】

■「修羅の狭間」
 男と女の車間距離の大切さを語る話です。
 大人の男を描いた小品です。【3】

■「残像」
 三角関係の描写が中途半端です。
 心の動きが語られていません。表面的な人間しか描けていません。
 もったいない作品です。【2】

■「不在の女」
 スッキリした仕上がりです。背景に音楽が流れている気がします。
 人間関係の爽やかさが残りました。【4】

■「赤心」
 よく出来た話です。しかし、小説作法としての技巧が目につきます。
 節子をもっと描けば、話に膨らみが出たように思います。その意味では、少し角張った作品になっています。
 題名の「赤心」の意味を、辞書を引いて初めてしりました。「まごころ」の意味なのですね。作中に出て来る詩集のタイトルでもあります。このあたりの処理が、中途半端でした。【3】





posted by genjiito at 00:43| Comment(0) | TrackBack(0) | □藤田通読
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