2008年03月26日

井上靖卒読(32)「流星」「梧桐の窓」

 「流星」「梧桐の窓」は、共に角川文庫『霧の道』に収録されている作品です。


(1)「流星」は、戦時中の満州での、2人の男の物語です。
 2人は、かつての夢が今もあるのか、と語り合います。人間は、生きるために努力すべきだと。
 若い時は、流星の終焉の清潔さを語っていたのですが、今は清潔な生命の終わり方はない、と言うのです。
 きれいな小品です。【3】



初出誌:小説と読書
初出号数:1950年7月号

文春文庫:断崖
角川文庫:霧の道
井上靖小説全集3:比良のシャクナゲ・霧の道
井上靖全集2:短篇2





(2)「梧桐の窓」

 主人公美也子の過去の恋人とのことが、少しもったいぶって明かされていきます。何があったのか、と思いながら読み進むことになります。

 月光の設定がありました。昔の恋人に逢いに行く船窓から見える月を、「三角波が白い月光に光っていた。」(147頁)とあります。
 時間の軸を切り替える役割を、この月光がしているように思います。

 美也子は、昔の恋人の今の生活を確認して、自分の今を見つめ直します。そして、明日に向かって、仕事に立ち向かいます。
 主人公の心の整理の過程が、丁寧に描かれています。
 常に前を見て生きる女を描く、いい作品です。

 これは、恋人の弟である雅彦が美也子に寄せる気持ちをもっと描き込むと、中編小説へと仕上がっていくように思いました。

 このメモを記していて、「梧桐」を「あおぎり」と読むことを知りました。自分の国語力にガックリの瞬間でした。【3】



初出誌:キング
初出号数:1951年11月号

角川文庫:霧の道
井上靖全集3:短篇3




posted by genjiito at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | □井上卒読
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