2007年09月18日

藤田宜永通読(1)『リミックス』

Ug6yvu4x_sリミックス


 『リミックス』(藤田宜永、集英社、2006.10)は、自由気ままに生きるラッパーの冬美の行動パターンがおもしろい小説です。
 何を考え、何をするのか、読者に予測できないというところがいいと思います。彼女の意外な思考と反応が楽しめます。都心を歩き回る『転々』に近い展開だと思いました。

 次の言葉を見て、藤田氏は女をよく見ていると思いました。

「身勝手さは、相手のことを慮らない力である。これは女ならではの強さに思える。」(128頁)

 私は、女は男とは人種を異にすると思っています。これは、その点を側面から突いています。

 第一章で、冬美がつぶやく『白い恋人たち』が、それまでの冬美のイメージと違っているのが気になりました。
 そんな中で、大学の国文科で和泉式部を研究しているという圭子が出てきます。その対比がおもしろいのですが、妙な味付けが中途半端なままで終わったのが惜しまれます。

 後半の、冬美をめぐるちょっとした謎解きが、読者を惹き付けていきます。その中で、先の『白い恋人たち』がキーワードとなり、エンディングを導くものとなります。
 一人の女の子をしつこく描く中で、人間の過去の重みを感じさせてくれます。

 欲を言えば、少し作り過ぎた話になっているように思われる点が気になります。ネタの新しさに寄り掛かり過ぎ、とでも言えばいいのでしょうか。

 また、中盤からの、情を前面に出したところから、前半の歯切れの良さが失われ、モヤモヤとした展開となります。タッチが二つに分裂した点も惜しまれます。【3】

posted by genjiito at 00:40| Comment(0) | TrackBack(0) | □藤田通読
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/178852004
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック