2020年08月23日

京洛逍遥(652)七條甘春堂さんの掛け紙に書かれた和歌のこと

 昨日、京都国立博物館で開催中の、西国三十三所の特別展を見に行ったことは、昨日のブログに書いた通りです。
 その帰りに、博物館のすぐ東横にある、京菓子屋の七條甘春堂さんに立ち寄りました。
 特別展に関係する「西国三十三所草創1300年」のシールを貼った京麩焼きのお菓子があったので、抹茶のわらび餅と一緒にいただきました。

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 そのお菓子を入れて手渡された袋に、『源氏物語』の「若紫」の巻に出てくる和歌が書かれています。

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 この和歌を、私がかねてより提唱している「変体仮名翻字版」で翻字すると、次のようになります。

手尓つみて
  いつし可も見む紫の
 ね尓通いける
    野辺の若草


 以前は、この和歌の文字表記が一文字だけ間違って書かれていたことを思い出したので、包み紙である掛け紙がないかと聞くと、今は和歌を書いたものは使っていないとのことで、藤の花が描かれたものを見せてくださいました。

 記憶が、今からちょうど3年前に溯ります。

 日比谷図書文化館で源氏の講座があった、2017年9月10日のことでした。
 受講生のお一人から、変体仮名混じりの文字で記された掛け紙を手渡され、そこに書かれている和歌について質問がありました。この和歌の文字「紫つね尓」は間違っていませんか、と。

180211_kansyundo-G.jpg

 これも、「変体仮名翻字版」で翻字しておきます。

手につみて
 い徒し可も見む
紫つね尓
  通ひける野辺
       の
      若草


 この和歌の3行目「紫つね尓」は、正しくは「紫[の or 能]ね尓」とあるべきです。
 諸本の本文を調べると、すべてが「紫の」となっています。「紫つ」は一例もありません。
 そこで、3年前の秋に私は七條甘春堂さんの所へ行き、このことをお尋ねしました。すると、会社の役員の方に問い合わせをしてくださり、後日返答をいただくことになりました。
 結果は、和歌を書いていただいた方が偉い書家の方なので、書き直しはお願いしにくい事情をご理解ください、ということで終わりました。その翌年は、まだこの掛け紙の文字はそのままでした。そして昨日、掛け紙には和歌はなく、手提げ袋の文字が書き変わっていることを知りました。
 あまり追求しても、との思いから、3年前にはこのブログには報告しませんでした。しかし、今は書き変わっているので、こんなことがありましたということで、ここに記録として残しておきます。
 
 
 
posted by genjiito at 20:31| Comment(0) | ■変体仮名