2020年08月09日

読書雑記(292)『京都寺町三条のホームズ 12』

 『京都寺町三条のホームズ 12 〜祇園探偵の事件手帳〜』(望月 麻衣、双葉文庫、2019年7月)を読みました。

200328_homes12.jpg

 第1章「最初の依頼」は、無理矢理人間関係を複雑にしているように思えます。もっと単純な関係でも物語は成り立ちます。また、「洸」を「ほのか」と読むことは、少しねじ込みすぎかな、と思いました。【2】

 続く「掌編 拝み屋さんと鑑定士」は、本当に短い話ながら、きれいな作品に仕上がっています。3人の描写が柔らかくて和菓子の雰囲気が漂います。ただし、「みなさんで食べてください。」はいただけません。「食べる」という言い方が、この上品に仕上がった作品を少しだけ下品にしました。【4】

 第2章「矜恃の証」は、登場人物の性格が描き分けられてきて、語られる世界が豊かになっています。しかし、話の内容である「ご当地レンジャー」が俗すぎます。これはカットして、それに続く「京日和」だけでまとめるべきでした。
 京都文化博物館と平安神宮を、ホームズさんに案内してもらえたのはラッキーでした。博物館は素っ気ない説明でしたが。
 平安神宮の話の中で、次のフレーズは誤植でしょうか。
ここに平安京を再現わした広大な神宮を建てたんです。(183頁)


 それに続く次のことばは、記憶に残るものです。

 これから町が衰退していくかもしれないという時に、皆の気持ちを鼓舞し、今後も都としてやっていこうと、見る者を圧倒するような美しく巨大な神宮を建てたのだ。(中略)
「歴史が浅いとか、そういう話ではないんですよ。今も京都がこうして栄えていられるのは、この平安神宮があってこそなんです」(184頁)


 また、次の葵のことばもいいと思います。この章の得点部分です。【3】

 かつて絶望の中にいた京都に住む人たちが、この平安神宮を心の支えに背筋を伸ばしてがんばったように、この美しく広大で荘厳な神宮に、元気をもらいに来たい。(186頁)


 第3章「パンドラの箱」は、おもしろく読みました。ただし、登場人物が多すぎて、話が混乱しています。もっとシンプルになるはずです。「第二次世界大戦」というキーワードについては、若い読者のためにも、もう少し説明がいると思います。【3】

掌編「不思議な時間」
 品よくまとまった作品です。この作者は、こうした短編がうまいと思います。

 本書には、さらに付録としての掌編「思い出の地で−」が添えられています。読者へのサービス精神が旺盛です。【4】
 
 
 
posted by genjiito at 20:41| Comment(0) | ■読書雑記