2020年06月11日

読書雑記(287)菊池・松村編『よくわかる観光学3 文化ツーリズム学』

 今日、河原町三条の交差点角にある「京都市河原町三条観光情報コーナー」が、まだ閉まっていることがわかりました。4月11日から6月18日までなので、2ヶ月以上です。河原町からすっかり観光客が消えたことを、ここが閉まっていることが教えてくれます。

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 この向かいにある回転寿司屋の「むさし」で、お昼をいただきました。新型コロナウイルスの問題が起きてから、もう3回も来ています。そして、これまで海外からの観光客8、日本のお客さんが2の割合であったのが、観光客がそっくりそのままいなくなったことと、日本の観光客も激減したことで、いつもお客さんは数人です。今日も3組だけで、しかも高齢者だけでした。時間帯によるとしても、新型コロナウイルスと若者の回転寿司離れの関係については、あらためて考えてみたいものです。
 さて、京都の観光客がまったくいなくなったことに関して、日本の方々の姿が最近は少しずつ増えてきているのは、この河原町通りや四条通りを歩くとわかります。海外からの観光客は、依然としてほとんどみかけないのが実状です。こんな街の様子を見て、先月以来、オーバーツーリズムに関係する本を2冊読み、読書雑記として報告しました。

「読書雑記(285)村山祥栄『京都が観光で滅びる日』」(2020年05月23日)

「読書雑記(286)中井治郎『パンクする京都』」(2020年06月07日)

 共にハズレの本だったので、今回は原点に立ち返り、観光の基本を知るための選書をしました。
 京都から観光客が消えたことは新型コロナウイルスが原因であることは明らかです。それでは、これからどうしたらいいのかは、観光そのものの始発点に戻る必要があると思ったからです。そもそも、私は「観光学」なるものはまだ日本では確立されていない、という、素人ながらも持論を持っています。論と言うのはおこがましいので、日常生活などから感じている感覚から、読書を通しての管見である私見です。それを再検討するためにも、さまざまな書籍を読み漁っているところです。
 今回は、朝倉書店から教科書として刊行されている「シリーズ よくわかる観光学〈全3巻〉」の中から、第3巻の『文化ツーリズム学』を読みました。まさに、基本的な本だと思いました。ここから得た知識や感想を元にして、新型コロナウイルスによって観光客が激減した京都の観光を考えていきたいのです。

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 まず、このシリーズのパンフレットから。

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 本書の内容は以下の通りです。

■目次■


文化ツーリズムとは―その本質と目的、方法
文化ツーリズムの基礎としての地理学
文化ツーリズムの基礎としての社会学
文化ツーリズムの基礎としての文化人類学
文化ツーリズムの基礎としての建築学
文化ツーリズムの基礎としての都市計画とまちづくり
文化ツーリズムとヘリテージツーリズム
文化ツーリズムと聖地巡礼
文化ツーリズムと都市観光
文化ツーリズムとスポーツ観光
都市形成史から考える文化ツーリズム―江戸・東京を対象として
交通計画学から考える文化ツーリズム
展望タワーと都市観光
歴史文化資源をめぐる歴史的環境保全と観光開発の関係
文化ツーリズムの課題と可能性


 私は、まだ勉強中です。ここに書かれている内容に関しては、ほとんどコメントができません。ましてや、これは教科書として刊行されたものです。そこで、本書を読み進めながら、自分なりにチェックした箇所を3例だけ抜き出しておきます。これからこの問題を考えるための、メモとしておくためです。あくまでも、私の問題意識からのものであることを、あらかじめお断わりしておきます。

●文化ツーリズムを学ぶ目的について考えてみよう.
 第一の目的は,何といっても「文化」が「自然」と並ぶ観光資源だからである.世界遺産が自然と文化の二つを基軸として分類されているように,観光の対象は「人間の手では創造できない」自然か,「人間の手が入って創りあげられた」文化のいずれか,あるいはその複合である.(中略)文化ツーリズムを学ぶことは,過去を知り,現代を考察し,未来を洞察することでもある.
 文化ツーリズムを学ぶ第二の目的は,もっと現実的なものだが,この分野が土木・建築・都市工学などの観光を支える計画系の技術を学ぶこととつながっているからである.たとえば,橋や建築はその美しさで文化ツーリズムの対象であるとともに,観光地を「つくる」うえでの重要な要素でもある.(5頁)


●クリスティに観光を題材とした作品が多い最大の理由は,何といっても彼女が作家として最も活躍した時期が 1920~1930 年代という,欧米にとって空前の海外観光ブームの時代だったことだろう.近代観光が 19世紀半ば,イギリスのトーマス・クックによる団体旅行の営業によって始まったことは有名だが,それを支えたのは鉄道の発達で,、鉄道に乗って普通の人々が万国博覧会の開かれているロンドンや,さらにはパリまで旅に出かけるようになった.
 20世紀になり,世界大戦が終わって平和が戻ると,西ヨーロッパの上流階級はさらなる交通の発達を受け,地中海沿岸のリゾート地やエジプトなど中近東にまで足を延ばす. アメリカ人も強いドルを片手に大西洋を越えてやって来るということで,それらの観光を支えたのがイスタンブール-パリをつなぐ「オリエント急行」やロンドン-パリを結ぶ「青列車」,ノルマンディー号やクイーン・メアリー号など8万トンを越える大型豪華客船だった。(11頁)


●《この度新都造営に際しては道路の修復と共に、溝渠の開通には一層の尽力然るべきやに被存候,都市外観の上よりしても東京市には従来の溝渠の外,新に幾条の堀割を開き舟行の便宜あるように致し度く候,急用の人は電車自動車にて陸上を行くべく,閑人は舟にて水を行くように致し候わば、おのずから雑踏を避くべき一助とも相成り申すべく候,京都はうつくしき丘陵の都会なれば,これに対して東京は快活なる運河の美観を有する新都に致したく存じ候》(「快活なる運河の都とせよ」)
 荷風は,かつて「水の都」であった江戸の風景を,東京の都心に復活させようと呼びかける.ベニスのような美しさをもち,江戸時代のように溝渠すなわち運河を縦横に張り巡らした都市.急用のある人は陸を行き,時間に余裕のある人は舟を使う「快活な運河の都」――それが江戸を再創造しようという荷風の提案である.(133頁)

 
 
 
posted by genjiito at 21:17| Comment(0) | ■読書雑記