2020年03月07日

入院5日目、『春琴抄』の質問をする

 血糖値は「101」で良好。体温、血圧共に問題なし。
 朝食は、4個のパンの内、2個しか食べられませんでした。

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 担当医の経過観察では、順調に回復しているとのことです。来週の9日(月)に退院、16日(月)の朝一番に診察に来ることになりました。今のところ18日(水)からミャンマー行きとなっているので、ツメツメのスケジュールです。
 昼食も、ご飯はほとんど食べられませんでした。おかずはすべていただきました。

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 午後は、気分転換を兼ねて妻と一緒に、1階ロビーにあるタリーズでコーヒーをいただきました。自分が家で淹れる「Hug」のコーヒーが一番おいしいと思っているので、めったに外でコーヒーを飲むことはありません。本当に久しぶりです。カフェオレをおいしくいただき、のんびりと時を過ごしました。

 入院している南病棟のエレベータホールから、東山三十六峰を見渡しました。右に、平安神宮の朱と緑が鮮やかです。目の前の大文字、左の比叡山も、今日は殊の外くっきりと見えます。白内障の症状が改善したことを実感します。

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 夕方、主治医の先生の診察がありました。術後の経過は順調だとのことです。
 ちょうどいい折だと思い、厚かましくも先生に次の『春琴抄』からの抄出文をお見せして、そこに書かれていることを細かく質問しました。これは、昨日の手術の時に、水晶体が取り除かれた瞬間を教えてほしい、とお願いしたことを受けてのものです。お尋ねしたのは、次の文中の赤字にした7点です。

谷崎潤一郎『春琴抄』

佐助は春琴の死後十余年を経た後に彼が失明した時のいきさつを側近者に語ったことがありそれによって詳細な当時の事情がようやく判明するに至った。
(中略)
ある朝早く佐助は女中部屋から下女の使う鏡台と縫針とを密かに持って来て寝床の上に端座し鏡を見ながら我が眼の中へ針を突き刺した針を刺したら眼が見えぬようになると云う智識があった訳ではないなるべく苦痛の少い手軽な方法で盲目になろうと思い試みに針をもって左の黒眼を突いてみた黒眼を狙って突き入れるのはむずかしいようだけれども(1)白眼の所は堅くて針が這入らない(2)黒眼は柔かい二三度突くと巧い工合にずぶと二分ほど這入ったと思ったらたちまち(3)眼球が一面に白濁し視力が失せて行くのが分った(4)出血も発熱もなかった痛みもほとんど感じなかったこれは水晶体の組織を破ったので(5)外傷性の白内障を起したものと察せられる佐助は(6)次に同じ方法を右の眼に施し瞬時にして両眼を潰したもっとも直後はまだぼんやりと物の形など見えていたのが(7)十日ほどの間に完全に見えなくなったと云う。(青空文庫より)


 この作品は、昭和8年(1933年)に発表されたものであることをお伝えし、いろいろとご意見を伺いました。突然の質問だったので、もし違っていたら私の聞き間違いです。主治医の先生には、『春琴抄』のことは初めてお話したものです。とんでもない無礼な患者ですみません。

(1)「白眼の所は堅くて針が這入らない」
 針にもよるが、白目も軟らかいので、這入らないことはないでしょう。
 縫針といっても物にもよるけれど、鋭いので這入るでしょう。

(2)「黒眼は柔かい二三度突くと巧い工合にずぶと二分ほど這入った」
 「二分」が6ミリ程であれば、水晶体に届きます。

(3)「眼球が一面に白濁し視力が失せて行く」
 そうでしょう。

(4)「出血も発熱もなかった痛みもほとんど感じなかった」
 黒目には血管がないので出血はしません。発熱はないとしても、黒目を突いた瞬間は痛さを感じるはずです。あなたは麻酔をしていたけれども、この人は麻酔などしていないので。

(5)「外傷性の白内障」
 (3)の時の「白濁」がこの状態です。

(6)「次に同じ方法を右の眼に」
 「私の手術が左目を先に、次に右目だったように、この順番には何か意味がありますか?」とお尋ねしました。すると、利き目というのがあるので、利き目が右だったとしたら左から突くでしょうね。あなたの場合は、たまたま、偶然そうなっただけです。

(7)「十日ほどの間に完全に見えなくなった」
 そうなるでしょうね。


 この『春琴抄』が、今から87年前に書かれたものであることはともかく、谷崎さんは専門家の話を聞いて書いているのでしょうね、とのことでした。まだ、この作品が成立するに当たっての背景は調べていません。とにかく、私の体験を起点とする今日のところは、以上の確認をしました。『春琴抄』は、興味深い問題が横たわる作品だと思います。

 晩ご飯は、大好きな豆腐のハンバーグでした。

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 ここの食事は、温かいものと冷たいもののバランスが絶妙です。それは、配膳のワゴンの内部が、温部(左側)と冷部(右側)に分けられていることも関係すると思われます。

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 明後日が退院なので、明日が最後の食事です。果たして、お寿司は姿を見せるのでしょうか。今は、そのことだけが気がかりです。
 
 
 
posted by genjiito at 20:08| Comment(0) | *健康雑記